イノベーションを生み出す 共創・共感のデザイン思考 NEDO特別講座 ロボットサービス・ビジネススクール 学校法人常翔学園 大阪工業大学
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48医療福祉ロボット【大阪会場】 私は、英国の医療制度の定点観測を、約20年にわたり行ってきました。その中で、英国の厚生省が始めた、医療改革のTECSというケアシステムをご紹介します。イギリスでは、日本と異なり、患者を健康にすればするほど開業医がもうかるインセンティブ設計になっています。そこで、患者あるいは健康な人が、自分で健康管理しましょうということで、テクノロジーを駆使したセルフケアが進んでいます。 イギリスの自治体では、2016年から、高齢者に対するTECSが導入されました。システムには、例えば、患者に対して、地域の看護師が、ショートメールでサポートするSimpleTeleHealthがあります。患者は、自分で体温や血圧をセルフチェックしてメールし、異常があれば看護師がリターンするという仕組みで、アナログとデジタルを合わせたネオアナログのスタイルです。ウエアラブルで自動的にデータを飛ばすといったことは、あえてしません。セルフケアでは、自分が健康であることを認知してもらうことが大事だからです。こうしたケアシステムは、現在、高齢者を対象としていますが、アメリカでは、ジェネレーションXと呼ばれる、現在30代から50代の人々が、今後のマーケットを牽引するといわれています。この世代の特徴は、アクティブで、何かにつけてバランス良く、ハッピーだと。ICTにも強い意志を持っていて、健康、医療に興味がある。この人々に向けて、予防的マーケットを整備する必要があると思います。また、TECSの中で、医学教育のためのシステムとロボットが開発されています。イギリスの医師免許は、バリデーションシステムを導入しているので、5年に1回勉強をしなければならないため、病院の中に更新用のシミュレーションとして、ロボットの開発が進んでいます。 また、近年は、医療分野をはじめ、駅のような公共施設、オフィスなどで、感性デザイン分野も注目されています。目に見えない香りをデザインし、アロマブランディングとして集客している施設や観光地も登場しています。MOT視点からみた健康・医療・福祉ロボットの展開は何処へ向かう?県立広島大学大学院経営管理研究科(MBA) 吉長 成恭 客員教授

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