イノベーションを生み出す 共創・共感のデザイン思考 NEDO特別講座 ロボットサービス・ビジネススクール 学校法人常翔学園 大阪工業大学
6/100

Moravec, Hans (1988), Mind Children, Harvard University Press ロボットは二足歩行ができても、階段をスムースに上り下りするのは難しく、ドアのノブを持ってノブを回してドアを開け、部屋を行き来するのも現状の技術では人のように簡単にこなすことは難しい。現状、人と共存して活動ができるサービスロボットという独自の商品は完成をしていないのである。既存商品のロボット化・知能化という改良商品開発を行っているということ、それが現状のサービスロボットの技術的、商品的な事実ということを理解しておく必要がある。 一方、日本が先頭を走る長寿高齢化の波は、医療技術の進歩とともに世界中に広がってきており、人口動態を考えた新たな社会をどのように構築していけばいいのか誰も明確な解を持たないまま、五里霧中の中を歩くような模索が世界中の国で始まっている。経済学者のPeter F.DruckerはThe Discipline of Innovation (A version of this article appeared in the August 2002 issue of Harvard Business Review.)の5. Demographic ChangesでThe Japanese are ahead in robotics because they paid attention to demographics. Everyone in the developed countries around 1970 or so knew that there was both a baby bust and an education explosion going on; about half or more of the young people were staying in school beyond high school. Consequently, the number of people available for traditional blue-collar work in manufacturing was bound to decrease and become inadequate by 1990. Everyone knew this, but only the Japanese acted on it, and they now have a ten-year lead in robotics. と述べて、高齢社会をロボット技術で乗り切れるチャンスを日本のみが現在持っていると述べている。1985年の予想である。このように、超高齢社会の労働力不足という大問題の解決策の一つとしてサービスロボットの社会への普及への期待が高まっている。しかし、先に述べたように人が構築した人間にとって便利な社会システムの中で、これまでは若い労働人口が豊富な社会であった。そのため、主とした労働力は健常者であり、大多数の健常者の利便性を考えて社会システムを構築すればよかったものが、これからは高齢化により認知能力、身体的な運動能力が衰えてきている人が多くなる。その結果、人口動態が大きく高齢化にシフトをし労働人口として高齢者の人たちの力も有効利用して、若い健常な人たちと共存していく新たな社会モデルを、ロボット技術を活用して実現をしていく必要がある。理想は人型ロボットが人の代わりの作業をしてくれることであるが、それは先に述べたように現状の技術レベルでは不十分であるので、実用的な人型ロボットが実用化されるまでの間は、ロボット的な商品で代替をして、超高齢社会を快適なものにしていかなければ現実的な解はない。4

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る