NaOHと炭酸水による緩衝液(一段解離) □□NaOH solution buffered by CO₂ーHCO₃^-

NaOH水溶液の調製とpHの計算

1 gのNaOH(分子量40)を1 Lの純水に溶解すると､0.025 M NaOH水溶液になります｡この水溶液のpHは12.4です｡ここでは､電気的中和と化学平衡計算でpHを求める丁寧な計算をしてみましょう｡正電荷と負電荷はつり合う､ナトリウムは完全に電離している､[H⁺]と[OH^-]の積は水のイオン積10^-14に等しい､の3つの条件から､[OH^-]を二次方程式で求めます｡[H⁺]=1×10^-pHと記述して､10のべき乗の正負を逆転させた値がpH値になります｡pH値が12.4になることが読み取れましたか?

炭酸水のpH 方程式による方法

0.05 Mの炭酸水のpHを計算しましょう｡炭酸の平衡定数として､ここでは､pKa=6.3447を使用します｡この数値は､米国LLNLによるデータベースthermo.com.v8.r6+に記載されているものです｡

です｡では､pHを計算しましょう｡CO₂(g)として気中に逃げていくことがないと仮定します｡水中のCO₂はCO₂(aq)とHCO₃^-に解離します｡解離率をaとして[H⁺]をaの関数にします｡

電気的中性の式に入力すると､

です｡aの三次方程式を解き､現実的な解としてa=0.003 (解離率0.3%)が得られます｡a → [H⁺]→pH=3.8と計算できます｡

計算は煩雑で､三次方程式を解く･･･絶望的ですね｡絶望してください｡

炭酸水のpH トライ･アンド･エラーによる方法

｢三次方程式を解く｣ところを､｢aに適当な数値を代入してみる方法｣で考えてみましょう｡

関数f(a)はa=0.003と0.0031の間で､正負が逆転するので､a=0.003009と矛盾しません｡この値を使えば､a → [H⁺]→pH=3.8と計算できます｡この方法であれば､表計算で計算ができそうです｡

炭酸水とNaOH水溶液を混合した場合

上の2種類の水溶液を混合したときのpHを計算しましょう｡

□0.025 M NaOH水溶液 □ 300 mL

□0.050 M 炭酸水 □□□□ 500 mL

混合水溶液では､

なので､電気的中性の式から､

解離率は0.3であることが分かります｡すなわち､pHは､

で､5.98になります｡

もう少し簡単な方法があるのではないですか?

あります｡｢Na⁺がもたらす正電荷を炭酸が解離して生じるマイナスイオンによって中和する｣と考えればいいのです｡上の例では､Na⁺の量は7.5 mmol､炭酸の量は25 mmolです｡炭酸は､25 mmolのうちの7.5 mmolをマイナスイオンとして切り出せばいいのです｡7.5/25=0.3ですから､解離率 a= 0.3､pHは5.98になります｡

ところで､解離するほど電気を通しやすくなることに気がつきましたか? pHを変化させると同時に電気伝導率が変化するのです｡これは､炭酸解離の平衡定数を求めた研究論文(1900年代前半)に､水溶液の電気伝導率を計測する図が描かれています｡こうして､平衡定数を実測したようです｡

(おわり)

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