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大阪工業大学 情報科学部 宇宙物理・数理科学研究室 2013年度 卒業研究

「宇宙論パラメータによる宇宙膨張則の比較ツールの作成」

情報メディア学科 氏名 東田 有記

2014/2/17 作成

概要 / 目次 / 卒業論文/

概要

 現在の宇宙は加速しながら膨張していることが観測によってわかっている. 本研究では,宇宙論から導き出すことができる宇宙の膨張の様子が,いくつかの宇宙論パラメータの設定によって どのように変化するかを,可視化するシミュレータ開発を行った.

 標準ビッグバン宇宙モデルの基礎となるのはフリードマン方程式である.アインシュタイン方程式から導き出された この方程式より,宇宙の大きさを示すスケール項aの時間変化についての運動方程式を得ることができる.

ここで,Gは重力定数,ρは密度,pは圧力,Λは宇宙項を示す.また,宇宙空間では曲率が正,0,負の3種類のみで あることが知られている.宇宙を記述する密度パラメータΩtot,宇宙項パラメータΩΛ,曲率パラメータΩkの宇宙論 パラメータは,フリードマン方程式によって,以下の条件を満たすことになる.

 この条件の下で,宇宙のスケール項の時間変化を得ることができる.常微分方程式の近似解を求めるRunge-Kutta法を 使用したプログラムを,Java言語で作成した.さらに,これらのパラメータの変化による宇宙の膨張の様子を比較し 学習することができるアプリケーションを作成した.その画面の例を図1,図2に示す.

図1:曲率が正・0・負の3モデルの比較
図2:Ωtot=0.25,ΩΛ=0.75,Ωk=0.0のモデル

 左図の横軸は時間,縦軸は宇宙のスケール項aである.図1では,入力パネルから学習Iを選択することで, 曲率の違いによる宇宙膨張の様子の違いを比較したものである.このように,学習を選択し,実行することで 宇宙膨張の時間変化及びその宇宙年齢が表示され,宇宙膨張を視覚的にとらえることができる.ユーザーが実際に 入力できる学習も作成した.時間変化の表示は,現在の時間をt=0とした場合と,宇宙の始まりをt=0とする2種類を 用意した.また,凡例を表示させることによって,パラメータの式の値が一目でわかるよう工夫した.

 Planck衛星による宇宙背景輻射の観測データなどから得られたパラメータを代入した宇宙膨張の様子を図2に示す. この結果より,宇宙が現在では加速膨張していることがわかる.


目次

  1. 序論
     1.1 宇宙のはじまり
     1.2 宇宙の現在と今
     1.3 目的

  2. 宇宙論の歴史
     2.1 膨張宇宙論の確立
     2.2 膨張宇宙の観測的発見
     2.3 標準ビッグバン宇宙モデルの確立
     2.4 加速膨張の発見

  3. 標準ビッグバン宇宙モデル
     3.1 一般相対性理論
     3.2 フリードマン宇宙モデル
      3.2.1 宇宙原理
      3.2.2 三つの空間
      3.2.3 ロバートソン・ウォーカー計量
      3.2.4 エネルギー運動量テンソル
      3.2.5 宇宙モデルを表す方程式

  4. フリードマン方程式の解
     4.1 Runge-Kutta法
     4.2 宇宙膨張の3つの形
     4.3 状態方程式パラメータγの依存性
     4.4 宇宙年齢を考慮した宇宙膨張の可視化
      4.4.1 ハッブルの法則
      4.4.2 宇宙年齢を考慮した宇宙膨張

  5. 宇宙論パラメータ
     5.1 密度パラメータ
     5.2 宇宙項パラメータ
     5.3 曲率パラメータ
     5.4 パラメータで表すフリードマン方程式

  6. 宇宙膨張アプリケーションの解説
     6.1 開発環境
     6.2 フローチャート
     6.3 画面構成
     6.4 使用例と考察
      6.4.1 学習Iの場合
      6.4.2 学習IIの場合
      6.4.3 学習IIIの場合

  7. 結論


卒業論文



東田有記