研究活動報告
2025年
公益財団法人JKA補助事業
【2025年3月】
2025年度のJKA補助事業「プロトン感応性酸化物を用いたニューロモルフィック素子への応用(2025M-388)」に採択決定。
【2025年3月14~17日】
修士1年の鶴山さんが
第72回応用物理学会春季学術講演会(東京理科大学 野田キャンパス)で「β相MoO3エピタキシャル薄膜への電気化学的なプロトン注入と構造および電気特性評価」のタイトルで発表しました。LSAT基板上にMBE成長したβ相MoO
3薄膜に電極を形成し、硫酸水溶液を介して電気化学的にプロトンを注入したところ、Mo価数が減少、可視~赤外光領域で透過率が大きく減少することを報告した。また、わずかな注入電荷密度で抵抗率が5桁程度減少することも報告した。
【2025年5月13日】
高純度化学研究所の河原正美氏(研究助言者)が来訪されました。研究の進捗状況を報告し、デバイス構造に関する助言をいただきました。
ミーティングの様子
【2025年5月27日】
マスクレス露光装置が納品されました。デバイスの微細化のための露光・現像条件の最適化に着手しました。
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【2025年6月3日】
修士1年の上林さんが
2025年度応用物理学会関西支部第1回講演会(産業技術総合研究所 関西センター)にて「SrTiO
3基板のステップ表面処理と準安定β相MoO
3薄膜の分子線エピタキシャル成長」のタイトルで発表しました。LSAT基板の代わりにSTO基板を用いて、MoO
3薄膜をMBE成長した結果を報告しました。STO基板表面にフッ酸とフッ化アンモニウムを混合したエッチャントを用いてステップ&テラス構造を形成したところ、その上に結晶性のよいMoO
3薄膜がエピタキシャル成長することを報告し、聴講者から多くの質問をいただきました
【2025年6月6日】
修士2年の鶴山さんが
電子情報通信学会 電子デバイス研究会(山形大学)で「β相MoO
3単結晶薄膜の分子線エピタキシャル成長と電気化学的なプロトン注入効果」のタイトルで発表しました。LSAT(100)基板上にβ相MoO3 (100)単結晶薄膜を成長し,電気化学的にプロトンを注入した際の構造や物性変化を調べた結果を報告しました。注入電荷密度2.8 mC/cm2でcubic相HMoO
3が生成され,抵抗率が約5桁減少したこと,5.6 mC/cm2以降の注入で,近赤外光の透過率および抵抗率が緩やかに増加に転じたことを報告しました。このことについて,プロトン注入の進行に伴い結晶中に酸素空孔が導入され,キャリア密度が減少したためと考察しました。抵抗率が減少した素子に対して,抵抗率の温度依存性を調べたところ,半導体から金属へ相転移する兆候が見られたことも報告しました。このことについて,電子情報通信学会 信学技報 ED2025-15(2025)pp.14-17に掲載されました。
【2025年6月25日】
マニュアルプローバーが納品されました。プロトン含有のNafion膜をMoO
3薄膜へ接着し、プロトンゲートトランジスタへの応用するためのデバイス構造を検討開始しました。
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【2025年8月26日】
元 リガクX線研究所の稲葉克彦氏(研究評価者)が来訪されました。研究の進捗状況を報告し、XRD測定による薄膜の構造解析について助言をいただきました。また、本学工学部電気電子システム工学科の小山政俊准教授(研究評価者)より、薄膜の電極形成と評価方法について助言をいただきました。
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【2025年9月9日】
修士1年の上林さんが
第86回応用物理学会秋季学術講演会(名城大学)にて「ステップ&テラス処理SrTiO
3基板上へのMoO
3薄膜のMBE成長と構造評価」のタイトルで発表しました。フッ酸とフッ化アンモニウムを混合したエッチャントを用いてSTO基板表面にステップ&テラス構造を形成、その上に高品質なβ相MoO
3薄膜が形成されることを報告しました。XRD測定でファイスキャンおよび逆格子マップ測定を行った結果についても報告し、聴講者から多くの質問と助言をいただきました。