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生物反応が関わるシステムを設計・操作してモノづくりに利用する

 

新着情報研究内容

 当研究室が果たしている役割は、培養技術者育成(学生教育、企業技術者のリカレント教育)に加え、産業界からのニーズに基づいて開始される実践的な基盤技術開発とその支援、です。恵まれた研究・実証施設を活かしつつ、バイオものづくり開発の実務が飛躍的に効率化される事で社会実装が加速することを願って、実学的な開発を数多くのアカデミアや企業様と推進しております。微生物や動物細胞を対象とした培養技術全般(装置・操作の設計、最適化のやり方、産業化に向けて必要な諸知識の収集)について取り組んでいます。研究面だけでなく技術指導(本学規定に則る)の依頼も、随時受け付けております。

バイオものづくりラボにおける取組みについては、下記をご参照ください。
・JBA先端技術情報セミナーにてスケールアップと人材育成について講演(動画(45min)にリンク)2023.8
・バイオものづくりラボの紹介(パンフレットPDF)(一般向け動画(3min))2023.3更新
・バイオサイエンスとインダストリー(B&I)Vol.81,No.3 p.362−363 (2023)に取組み解説記事
・化学工学 86巻第4号 p.165-168 (2022)に取組み解説記事

バイオ試作品製造を加速するための“仕組みづくり”の確立に向けて(化学工学2022年4月特集へ寄稿より)


以降では上述の進行中の研究開発ではなく、これまで取り組んできた研究成果についてご紹介します。

↓クリックで各項目の詳細にジャンプします。


幹細胞・骨格筋組織の培養・工学活用に関わる技術開発

1.ヒトiPS細胞バイオリアクターの操作論設計(2011年ー)
2.複雑な構造を有する骨格筋の組織工学(2011年ー)
3.生体模倣培養による培養骨格筋の機能発揮、評価技術(2007年ー)

その他の細胞種の培養・工学活用に関わる技術開発
4.抗体医薬を生産するCHO細胞のバイオリアクター(2017年ー)
5.バイオオイルを生産する光合成微細藻類のバイオリアクター(2017年ー)
6.芳香族化合物を生産する組換え大腸菌のバイオリアクター(2017年ー)
7.組換え酵母を用いた乳酸製造に適したバイオリアクター(2002-2007年)
8.巨大DNA分子デリバリー技術(2002-2003年)
9.植物細胞(カルス)集塊のバイオリアクター(1997-2001年)

1.ヒトiPS細胞バイオリアクターの操作論設計(2011年ー)
 新しい再生医療技術は医学研究者により開発されますが,これを万人に行き届く社会実装技術とするには工学者の関与が欠かせません.医師が使う薬を製薬メーカーが作って届けているのと同様に,再生医療という新しい治療法を実現するには,細胞・組織・臓器を製造して医療機関に届ける“新しいバイオものづくり産業”を切り拓く必要があります.再生医療を下支えする細胞・組織製造産業を実現に導くにはどのような新しい技術開発が必要でしょうか.まず,治療に足りるだけの大量(10億〜100億個/患者)の細胞を,必要な時に必要なだけ,培養・製造・調達する技術が必要です.ヒトiPS細胞の特徴を考え,バイオリアクターで安定して培養するための装置・操作論の設計技術を開発しています.企業様との共同研究を遂行中.

関連文献:業績ページの論文45,47,解説16,19,20,21,22、2018年度生物工学論文賞
※大阪大学工学部・紀ノ岡正博教授の研究室における成果を含む

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2.複雑な構造を有する骨格筋の組織工学(2011年ー)
 昨今の報道でとりあげられている黎明期の再生医療では,用いる細胞種は単一であり,構造も比較的単純なものを用います.次世代の再生医療技術として期待されるのが,血管など複雑構造を有する組織・臓器の構築技術です.組織内の異種細胞の挙動を理解し制御することで,所望の最終構造を有する複雑組織を製造する技術の体系化に取り組んでいます.

関連文献:業績ページの論文35,36,41,42,44, 解説11,17,18
※大阪大学工学部紀ノ岡正博教授の研究室における成果を含む

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3.生体模倣培養(臓器リアクター)による機能発揮・評価(2007年-)
 作製した臓器を機能的に育むためには,生体内環境を適切に模倣した培養技術(臓器バイオリアクター)が必要です.例えば筋肉であれば,十分な栄養や酸素の供給に加え,生体内で神経から受けとる周期的電気刺激を培養環境で再現(筋トレ培養)することで,筋組織が肥大・発達し,活性張力も増大することを示しました.電気刺激を停止すると加齢や寝たきり等で起こる筋委縮(退化)を人工環境下で再現することにも成功しました.培養筋の筋機能を高度に評価可能な手法として培養筋張力計測技術も開発しました.企業様との共同研究を遂行中.



関連文献:業績ページの論文20-34, 39,知財20
※豊田中央研究所における成果を含む

以上のような,細胞・組織を設計・構築し育む技術の応用先は再生医療だけではありません.筋疾患に関わる創薬支援技術や培養食肉,培養筋アクチュエーターの実現を目指し,日々の研究における企業連携はもちろん,産学連携コンソーシアムの形成を通じて技術の社会実装像の創造活動を推進しています.


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4.抗体医薬を生産するCHO細胞のバイオリアクタ(2017年ー)
 抗体医薬が医薬品売上上位の過半数を占めるなど躍進している。抗体医薬を製造するプラットフォームとして広く用いられるCHO細胞の培養工学的研究を開始している。組換えによる生産株樹立から工業的な浮遊培養に至るまでのプロセス全体を見つめなおし、改良が必要な工程に対して新しいアイディアを提供していく。(大阪大学工学部・大政健史教授のご指導で着手。企業様との共同研究)
 CHO細胞の培養

5.バイオオイルを生産する光合成微細藻類のバイオリアクター(2017年ー)
 水と二酸化炭素、太陽光エネルギーを原料に、光合成微細藻類を用いてバイオオイルを生産する技術が注目されている。光と炭酸ガスの効率的供給が欠かせず、オイル生産に伴い細胞集塊が培養液中で浮上するという特徴も加味した最適バイオリアクターの形状や操作に関する工学的設計論は十分に確立されているとは言えない。バイオオイル大量生産プロセスに必要な、培養工学的基盤技術の構築を進める。(大阪工業大学工学部環境工学科・河村耕史准教授との共同研究)
 光合成微細藻の培養

6.芳香族化合物を生産する組換え大腸菌のバイオリアクター(2016年ー)
 カーボンニュートラルの概念に則り、多様な化成品や医薬品原料をバイオの力で製造する技術の開発が望まれている。芳香族化合物誘導体を生産可能な組換え大腸菌を効率的に培養、実生産に導くために必要な操作設計論について研究を進めている。(大阪産業技術研究所環境微生物研究室との共同研究)
 大腸菌の培養

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7.組換え酵母を用いた乳酸製造に適したバイオリアクター(2002-2007年)
 車載用製品に求められる品質,コストを満たすプロセスを目指し主に酵母菌体の大量培養と効率的乳酸発酵プロセスの開発に携わった.乳酸菌由来の乳酸は光学純度が低いため耐衝撃性・耐熱性が求められる車載用ポリ乳酸の重合に適さず,また乳酸菌は耐糖性や耐酸性が低く高濃度生産にも適さなかった.酵母は耐糖性,耐酸性が高く,本来は乳酸を合成する経路を持たない事を利用し,高光学純度(99.9%以上)のL-乳酸(ないしはD-乳酸)をフラスコレベルで高濃度生産(120 g/L)する株を作出した(論文13-18,特許4,5,8,9,12,13、生物工学会論文賞).開発した組換え酵母は醗酵性プロモーター(pdc1プロモーター)の制御下で乳酸生産を行うため,パスツール効果により,好気状態では菌体増殖を,嫌気状態では乳酸生産を優先させる(増殖と醗酵の切り替え)ことが可能である.菌体増殖工程では,好気醗酵の発生を乳酸生成によるpH低下でセンシングし,基質流加量の制御に用いることで高濃度培養が可能となった(論文38,特許11、解説13).乳酸醗酵工程に関してはkLa制御による醗酵収率と醗酵速度の両立を達成した(特許6).エタノール生成を厳密に抑制した酵母に発生してしまう増殖遅延が,ペントースリン酸経路への流束低下による細胞内レドックスバランスの不均衡によるものである可能性を代謝フラックス解析によって明らかにした(論文37).(豊田中央研究所における研究成果)



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8.巨大DNA分子デリバリー技術(2001-2002年)
 染色体工学やゲノム再編技術の発展に伴い、数百kbpから数Mbpもの巨大な遺伝情報(酵母人工染色体や染色体)を自由に異種細胞に導入(移植)する手法が求められていた。巨大DNA分子は溶液中の物理的ストレスにより壊れやすくハンドリングが難しい。巨大DNAをアルギン酸マイクロビーズの表面に付着・安定化させ細胞にデリバリーする手法を開発した(特許3、生物工学会論文賞)。この手法により極めて巨大な遺伝子を異細胞にまるごと移植することが可能となった。本開発手法は酵母(論文10)、植物(論文9,11)、動物細胞(論文12)に適用可能であることを示した。(大阪大学工学部・福井希一教授の研究室における研究成果)



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9.植物細胞(カルス)集塊のバイオリアクター(1997-2001年)
 砂漠化に伴う耕地面積の減少や食糧問題の解決のために、植物体大量生産技術の確立が重要とされた。植物細胞は培養器内に生じる物理的ストレスに弱いため、バイオリアクターへのスケールアップが容易ではない。アルギン酸ゲルへの包括固定化や液体培地中に増粘剤を加える独自手法(論文1-4,7、特許1,2)で植物細胞を物理的ストレスから保護することで250日以上もの長期間細胞培養を達成した。この手法は植物細胞による二次代謝産物生産(ブドウカルスによるアントシアニン生産)にも応用可能であった。本研究の遂行により名古屋大学から博士号(工学)を取得した。(名古屋大学工学部・小林猛教授の研究室における研究成果)



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大阪工業大学工学部生命工学科
生物プロセス工学研究室
(長森研)

〒535-8585
大阪市旭区大宮5-16-1

常翔学園大阪工業大学大宮キャンパス
東学舎2号館2階