かつて地域の交流の場だった「お寺」を現代に再現
構造の理論と意匠をバランスよく学習

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私の研究内容は、伝統的な仏教の徳目「八正道」に基づいたお寺の建築です。参拝や行事などの機会以外、あまり一般の人が足を踏み入れる空間ではないお寺の境内ですが、かつては、寺子屋が開かれたり行事が行われたりと、地域の人々が気軽に訪れることができる場所でした。祖母の実家がお寺であったため、小さな頃からお寺や仏教に親しんで育った私は、そんなふうに、もっとお寺と人々の生活を近いものにしたいと思い、本堂を中心として、お寺の敷地内に「八正道」をテーマとしたギャラリーなど八つの建物を作ることで、一般の人々の生活と仏教をつなぐ空間を作り出すことを目指しています。

大阪工業大学に入学したのは専門性と就職率がとても高いところに惹かれたから。建築の知識が全くなかった私も、図面の書き方など基礎からしっかり学べたため、3年次の時には木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造の図面が一通り書けるようになっていました。

何よりも大事だと感じているのは、設計の知識・技術はもちろん、構造の基礎が学べたことです。例えば先生に私が考えたデザイン(意匠)をチェックいただくと、構造の部分でダメ出しをされることがあります。なぜ指摘を受けたのか分からないこともありましたが、そのアドバイスに基づいてデザインを修正すると、最初に自分で考えたデザインよりも美しいものになることも。正確な“構造”を理解し、設計することで“意匠の美しさ”に直結していることを実感できました。

また、先生からのアドバイスで印象に残っているのは、建築士は「クライアントが期待している以上のものを提示しなければいけない」という言葉です。卒業後はハウスメーカーで設計職として働きます。営業担当と共にクライアント様と直接打ち合わせし、要望を踏まえたうえで設計を行うことが私の役割。先生からの言葉を忘れず、「設計といえば川上」といわれるくらいの人材に成長したいと思います。


※八正道…釈迦が説法で説いた徳目であり、正しい見方を指す「正見」、正しい考え方を指す「正思惟」などの八つの徳目を指す。