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このページでは、食品微生物学研究室で行っている研究内容を紹介しています。



  ① 微生物がもつ"酵素"を日々の生活に役立てる!!


目的酵素探索のための3つの戦略
  1. ゲノム情報を利用して、目的の酵素を探索する
    (オレンジ矢印)。
  2. 微生物を環境や食品から単離することなく、
          目的の酵素を探索する(青矢印)。
  3. 土壌などの環境や発酵食品から微生物を分離して、
      単離した微生物から目的の酵素を探す(緑矢印)。
 発見した酵素の機能を調べて、産業応用を目指す(赤矢印)。

 微生物の酵素は様々な領域で利用され、私たちの生活を豊かなものにしてくれています。 食品や医薬品の製造に使われていたり、ある機能を強化する目的で製品に添加されていたりしますし(例えば、洗浄力を高めるため洗剤に酵素が入れられている)、 病気の診断をする時にも、酵素が利用されたバイオセンサーやキットが使われたりしています。

 私たちの研究室では、日常生活をより良いものとするのに役立つ微生物酵素を探索して、 産業応用するためにその酵素の性質を明らかにしていくことを目的に研究しています。

 発酵食品に関係する微生物がもつ酵素も対象としていますが、特に高温環境(温泉、堆肥、土壌など)に生育する 好熱菌がもつ酵素をターゲットにしています。
 一般的に酵素(タンパク質)に熱をかけると、形が変わり(変性)、機能を失って(失活)しまい、そうなるともう元には戻りません。 卵白に熱をかけると、白い塊になってしまうのを思い浮かべてみてください。 しかしながら、好熱菌は高い温度でも生育できるように、熱で変性しづらい仕組みを備えた酵素を持っています。 つまり、熱に安定で壊れづらい酵素を持っているということです。

 壊れづらい酵素であれば、産業応用する時に扱いやすいですし、また製品になった時も長持ちしたり、何回も使用できたりするので便利です。


 見つけてきた酵素は、病院や食品工場で使用できるバイオセンサーとして応用していきたいと考えています。
 酵素を利用したバイオセンサーとして、血糖値センサーを挙げることができます。 血糖値センサーにはブドウ糖(グルコース)だけを認識して分解する酵素が使われていて、この分解の過程でセンサーに電気が流れるようになっています。 どれだけ電気が流れたかで、血液中にあるブドウ糖の量が分かるのです。

 つまり、ある化合物の血中濃度が変化するような病気があった場合、ブドウ糖を分解する酵素のように、その化合物を特異的に分解できる酵素があれば、その病気を 簡単に診断することが可能になります。 また食品中の有用な成分を分析することができるセンサーを作れば、工場や家庭でも簡単に成分分析することが可能になります。


研究テーマ例:
 好熱菌Geobacillus kaustophilus由来アミノ酸脱水素酵素の機能解析とその応用
 好熱好酸性アーキアSulfolobus solfataricus由来アミノ酸脱水素酵素の機能解析とその応用
 自然界からの色素依存性脱水素酵素の探索と機能解析
 アミノ酸脱炭酸酵素の機能解析とその応用



  ② "微生物""酵素"について知り、
          美味しくて体に良い食品づくりに活かす!!


 薬を飲むことで病気を治すのではなく、生理機能を高めるような成分を効率よく摂取できる食品(機能性食品)を食べることで 健康な生活を維持していきましょうという考えがあります。

 私たちの研究室では、特に発酵食品、つまり微生物がつくりだす機能性成分を対象として、どのような微生物が生産しているのか、 またどのような酵素が関与しているのかなどを明らかにしようとしています。
 ある有用な成分を大量に生産する微生物を見つけ出せば、その成分を多く含む食品を製造することが可能になります。 またその成分の合成や分解に関わる酵素の性質や機能が明らかになれば、その有用成分の生産を制御できるようになるはずです。

 食品中には様々な成分が含まれていますが、私たちは特にD-アミノ酸に着目して研究を進めています。
 タンパク質を構成する20種類のα-アミノ酸のうち、グリシンを除く19種類のアミノ酸はその構造中に不斉炭素を有しているため、2つの鏡像異性体である、L体とD体が存在します。 生物はこの立体の違いを厳密に認識し、L体のみで生体を構成しています。 そしてD体のアミノ酸は、微生物の細胞壁に使用されている以外では利用されておらず、生理機能も持たないと長い間考えられてきました。 しかしながら分析技術の進歩に伴い、L-アミノ酸と比べると圧倒的に少ないものの、ヒトの生体内にもD-アミノ酸が存在し、さらに重要な機能を担っていることが明らかになってきました。

 また最近では、食品に含まれるD-アミノ酸とその機能が注目され始めています。 D-アミノ酸はL-アミノ酸と比べて強い甘味を呈するものが多く、D-アミノ酸の存在が食品の味を良くするという報告や、 D-アミノ酸の一つ、D-アスパラギン酸の摂取が肌の保湿性を高めるという報告がなされています。
 このようなD-アミノ酸の機能を食品に付与させることを目的とした、D-アミノ酸含有食品の製造も少しずつではありますが始まっています。

 私たちは過去に、発酵食品中のD-アミノ酸合成に乳酸菌が大きく関わっていることを見つけました。
 現在は、乳酸発酵させて作られる発酵食品を中心にD-アミノ酸濃度を分析し、その生産に関与する微生物の単離と機能解析、 そして、その微生物がもつD-アミノ酸代謝関連酵素の機能解析を行っています。

 このような研究から得られた知見を、体に良くて、味も良い食品の製造に応用していきたいと考えています。


研究テーマ例:
 発酵食品中におけるGABAやD-アミノ酸の分析とその生産機構の解析
 タンパク質やペプチドにおける結合態D-アミノ酸の解析
 乳酸菌を初めとする各種微生物を対象とした有用成分生産条件の検討


微生物や酵素を利用して、食品の機能を高める
  1. 発酵食品中の有用成分を分析する(オレンジ矢印)。
  2. 成分分析の結果などを参考に、有用成分を高生産する微生物を
    単離して、その性質を調べる(緑矢印)。
  3. 単離した微生物がもつ有用成分の
    合成・分解に関係する酵素の機能を調べる(青矢印)。
 得られた情報を総合して、新規機能性食品の開発に貢献する(赤矢印)。


D-アミノ酸の特徴


  ③ "キノコの遺伝子や酵素の機能"を明らかにしてキノコを知る!!






  ④ 微生物に感染する"ウィルス"を暮らしのなかに応用する!!



 ウィルスと言っても、私たちが対象にしているのは微生物に感染するウィルスのことで、バクテリオファージと呼ばれるものについてです。

 ファージは自己増殖することができませんので、宿主となる微生物に感染して、その微生物がもつDNAやタンパク質を合成する装置を使うことで増殖します。 そのため、ファージには他の生物が持っていないような酵素が存在します。
 例えば、「逆転写酵素」はRNAを型にしてDNAを合成する酵素ですが、これはRNAを遺伝の本体とするウィルスのみが持っています。 この酵素は遺伝子工学の研究が発展する上で、大きな役割を果たしました。

 またファージはどんな微生物にでも感染できるわけではなく、あるファージは特定の微生物にしか感染することができません。 そのため、「病気の原因となる微生物のみを殺す治療薬」としてや、「腐敗に関係する微生物だけを殺すことのできる食品添加物」 としての利用が研究、あるいは実用化され始めています。


 私たちの研究室では、「極限環境に生育する微生物」 と 「発酵食品の製造に関与する微生物」 に感染するファージを対象に研究を進めています。

 極限環境の中でも、今は高温環境に存在するファージの探索を進めています。 ①でも書いたように、高温で生きる生物は高温に適応した酵素を有しています。 したがってファージにおいても、これまでよりもさらに産業応用しやすい、安定性の高い酵素が見つかるはずです。 また極限環境で生き抜くための、これまでに知られていないような特別な酵素が存在するかもしれません。

 一方、発酵食品に関係する微生物に感染するファージについての研究も行っています。 これらの成果は、発酵食品の製造面に貢献できるものと考えています。 例えば、発酵させすぎないように発酵段階をコントロールできるようになるかも知れませんし、あるいは発酵がうまく起こらなくなる原因としてファージが関係しているのであれば、 そのファージの研究を進めることで発酵食品の安定的な生産につながる可能性があります。


研究テーマ例:
 好熱菌に感染するファージの探索とその機能解析
 乳酸菌など食品に関係する微生物に感染するファージの探索

ファージの特徴とその応用例


本研究室でターゲットとしているファージ





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