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【総合人間学系教室】アニマルフリーとして期待される3次元骨格筋培養細胞によって世界で初めて発見!_「骨格筋由来の生理活性物質であるIrisinは骨格筋収縮により分泌される」

2022.05.23

  • Irisin、CTSBが筋収縮によって骨格筋外に分泌するかの是非は不明 Irisin、CTSBが筋収縮によって骨格筋外に分泌するかの是非は不明
  • 電気刺激実験の流れ 電気刺激実験の流れ
  • 有用性について 有用性について

 大阪工業大学(学長:井上晋)工学部総合人間学系教室・健康体育研究室の中村友浩教授らは、立命館大学(学長:仲谷善雄)スポーツ健康科学部の橋本健志教授および同大理工学部研究チームとの共同研究により、アニマルフリーとして期待される3次元骨格筋培養細胞(以下、3D-EM)を用いることで、骨格筋由来生理活性物質(マイオカイン)の一種であるIrisinが骨格筋収縮によって分泌されることを明らかにしました。本研究成果は、2022年5月20日20時(日本時間)に、「International Journal of Molecular Sciences」へ掲載されました。


 
本件のポイント

● 本研究では、運動誘発性の脳機能亢進に関わる因子として、マイオカインであるIrisinやCathepsin B(CTSB)に着目し、それらが運動(筋収縮)によって骨格筋細胞から分泌されるのかを検討しました。
● マイオカインが脳に作用するためには、骨格筋から血中へ分泌されることが重要な観点になるため、骨格筋細胞内から細胞外への分泌を検討することが必要になります。
● 独自の骨格筋培養細胞モデルにより、筋収縮刺激が、マイオカインであるIrisinの骨格筋からの分泌を促すことを世界で初めて明らかにしました。
● 本研究結果は、従来の平面(2D)培養細胞を用いた実験では得られなかった知見であり、生体筋により近い骨格筋モデルである3D-EMが今後のマイオカイン研究を加速させることが期待できます。
  
研究成果の概要

 脳機能関連マイオカインである乳酸、Irisin、CTSBは、脳の活性化に関与する脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現を制御する上流因子であり、運動により骨格筋から分泌されます。しかし、IrisinやCTSBが筋収縮によって分泌されるかどうかについては、未だ明確な結論は出ていません。3D-EMは、骨格筋収縮がIrisinおよびCTSBを分泌させるか否かを明らかにするのに貢献する可能性があります。従来の 2D 培養細胞では、薬物添加により運動を模倣することでIrisinおよびCTSB分泌を検討したものの、機械的な「筋収縮」を模倣できていません。我々は、電気刺激(EPS)により誘発される筋収縮がIrisinおよびCTSBの分泌に及ぼす影響を3D-EMで検討することを目的としました。
C2C12筋芽細胞と1型コラーゲンゲルからなる3D-EMを2週間分化させ、EPS無しのコントロール群とEPS群に分け実験を施行しました。その後、培地中のIrisinとCTSBの分泌量を測定しました。その結果、Irisin分泌量はEPS後に有意に増加しました。しかし、CTSB分泌量には両群間に有意な差は見られませんでした。本研究により、Irisinは収縮筋由来のマイオカインである可能性が示唆されましたが、CTSBは3D-EMにおけるEPS誘発筋収縮刺激では分泌されないことが明らかとなりました。
 
研究の背景

 骨格筋は運動刺激によって生体機能を好適化する生理活性物質であるマイオカインを分泌します。最近では、脳機能に関連するマイオカインとして、Irisin、CTSBが同定されているものの、それらは薬剤添加により運動刺激を模倣して検証されています。しかし、それでは物理的な「筋収縮」を模倣できておらず、先行研究は物理的な筋収縮刺激がIrisin、CTSB分泌の誘因となるかは結論付けられていません。その是非を検討するには、骨格筋細胞をEPSなどによって収縮させ、骨格筋からのIrisin、CTSB分泌を検討する必要があります。3D-EMは2D培養細胞よりも筋構造的に生体筋を忠実に再現できるだけでなく、EPSによって誘発される筋収縮力が10倍も高いことが知られています。さらに、3D-EMは培養プレートに固定せずに培養できるため、長軸方向の収縮範囲が広がり、従来の2D培養細胞よりも大きな収縮挙動が誘発されます。これらのことから、3D-EMは、従来の2D培養細胞での薬剤添加により同定されることのなかった、骨格筋収縮によるIrisin、CTSB分泌の有無を解明するための高度なアプローチとなることが期待されます。
 
研究の内容

 3D-EMはC2C12筋芽細胞と1型コラーゲンゲルを混合させたのち、2本の人工腱の間に播種し作製し、14日間分化させました。その後、EPS無しのコントロール群とEPS群に分け実験を施行しました。EPSは電極を培地に浸すことで3D-EMに印加させました。EPSは先行研究に基づき、13 V、66 Hz、2 msecで5秒間の刺激を5秒間の休息を挟み、計3時間印加しました。その後、培地中のIrisin、CTSB分泌をウエスタンブロッッティングにより測定しました。その結果、3D-EMはEPS印加時に強い収縮を示し、ヒトの運動時の筋収縮活性とそれに対応するシグナル伝達反応が亢進したことが確認できました。そうした中で、Irisinの分泌量はEPS後に有意に増加しました。しかし、CTSB分泌量には両群間に有意差はありませんでした。このことからIrisinは収縮筋由来のマイオカインである可能性が示唆されましたが、CTSBは3D-EMにおけるEPS誘発筋収縮刺激では分泌されないことが明らかとなりました。
 
社会的な意義

 近年、動物倫理問題の観点から、再生医療のみならず健康科学分野においても、組織工学に基づく「動物フリー」の新規3次元培養モデルの利用が求められています。本研究では2D培養細胞よりも成熟している3D-EMでのマイオカイン分泌を検証するプラットフォームを確立しました。近年、多数のマイオカインが運動に応じて産生され、体内を循環して標的組織や臓器に作用する「真の万能薬」として機能しています。特にIrisinの生理的性質については、例えば、様々な組織や臓器の維持に役立つ健康効果が示唆されています。このように、EPSによるマイオカイン分泌の効果を検討することは、健康に役立つ運動処方の開発に役立つと考えられます。それだけでなく、栄養素材や薬剤添加はマイオカインの分泌に関連することから、3D-EMによるマイオカインなどの運動誘発性分泌因子に関する多角的な研究が進めば、運動の重要性を示すだけでなく、運動の実施が困難な慢性疾患患者に対する創薬・栄養素の開発への貢献が期待できます。
 
論文情報

論文名:Investigation of brain function-related myokine secretion by using contractile 3D-engineered muscle
著者:Takeshi Sugimoto1, Tomohiro Nakamura2, Sho Yokoyama3, Toshia Fujisato4, Satoshi Konishi5, Takeshi Hashimoto1 
所属:1立命館大学スポーツ健康科学部、2大阪工業大学工学部総合人間学系教室、3大阪工業大学工学部機械工学科、4大阪工業大学工学部生命工学科、5立命館大学理工学部 機械工学科
発表雑誌:International Journal of Molecular Sciences
掲載日:2022年5月20日(金) 20時(日本時間)
DOI:10.3390/ijms23105723
URL:https://www.mdpi.com/1422-0067/23/10/5723

 
内容に関するお問い合わせ先


大阪工業大学 工学部総合人間学系教室・健康体育研究室 教授 中村友浩
TEL. 06-6954-4392(不在の場合は常翔学園広報室へ)
 
本件発信部署・取材のお申し込み先

学校法人常翔学園 広報室(担当:田中、上田)
TEL:06-6167-6208 携帯:090-3038-9887
 
 
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