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教員座談会
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CROSS TALK

「領域を越えた知が、未来を動かす。」

異なる分野で活躍する教授陣が語る

「今」と「未来」の研究

STORY

本学の多様な学問領域と
高い研究力が、
どのように新たな知を
生み出しているのか。
「防災」をテーマに、
異なる分野で活躍する教授3人の
研究者視点からその魅力に迫ります。

震災の教訓から生まれたレスキュー技術、
「環境に馴染む」設計思想、そしてデジタル技術による街のデザイン――。
大阪工業大学の3学部の教授陣が集い、それぞれの研究について語り合いました。
専門の垣根を越えた対話から見えてきたのは、複数の分野からなる「総合知」による革新と、手を動かし実践で学ぶことの重要性です。
学びの本質である好奇心を原動力に、いかに人を幸せにするか──。
未来社会を形づくるヒントがここにあります。

貝原 俊也 教授

情報科学部
データサイエンス学科
社会情報学研究室

貝原 俊也教授

活動拠点枚方キャンパス

システム工学の視点から、人工物(モノ)やヒト、社会を紡ぐ仕組みを研究。現在はデジタルツインや生成AIを活用し、街づくりにおける合意形成や社会の因果関係を解明するシミュレーション技術に注力する。

松野 文俊 教授

工学部
電子情報システム工学科
超生物ロボティクス研究室

松野 文俊教授

活動拠点大宮キャンパス

アリの群知能やヘビの運動など、生物の知能や動きを応用したロボット研究を展開。阪神・淡路大震災の経験から、宇宙探査や災害現場などの極限環境で活動するレスキュー工学・過酷環境ロボティクスを専門とする。

大須賀 公一 教授

ロボティクス&デザイン工学部
ロボット工学科
リアルワールド・ロボティクス研究室

大須賀 公一教授

活動拠点梅田キャンパス

制御工学を基盤に、複雑な実環境下で機能するロボットを研究。緻密な制御に頼らず、身体と環境の相互作用を活かして柔軟に適応するロボットのあり方を追究している。

THEME01

見る角度は違っても、目指すのは「誰もが安心して暮らせる日常」。

まずは、先生方が取り組まれている研究の「今」についてお聞かせください。

松野

私の研究室の名称は「超生物ロボティクス研究室」です。その名の通り、「生物から学び、生物を超えるロボットを創りたい」という一貫した思いで研究を続けてきました。例えば「アリ」に注目してみましょう。一匹一匹は小さく、非力な生き物に見えるかもしれません。しかし、彼らはフェロモンを使って驚くべきコミュニケーションを行い、エサの場所という「グローバルな情報」を群れ全体で共有します。人間のような言葉や身振り手振りとは全く異なる、高度な知能を秘めているのです。 私たちは、単に生物を理解して満足するのではなく、その仕組みを工学的に応用して、人間が立ち入れない過酷な環境で活躍するロボットを開発しています。宇宙空間や、地震などの災害現場がその舞台です。最終的な私の目標は、ロボットが特別な存在ではなく、私たちの道具として日々の生活に溶け込み、名前すら意識されない「消えるロボット」になること。レスキューロボットも、平時から社会に溶け込み、いざという時にも当たり前のように動く。そんな未来を目指しています。

大須賀

私は現在「実環境適応ロボティクス研究室」を主宰しています。分かりやすく言えば「現実の環境に住み着くロボット」の研究です。もともとは松野先生と同じく「制御工学」という、物事がいかに上手く動くかを理論的に突き詰める学問を専門にしていました。しかし、研究を続けるうちに「そもそも知能とは何か?」という哲学的な問いに惹かれるようになりました。 転機となったのは、阪神・淡路大震災です。被災地を目の当たりにし、「レスキューロボットを作れば解決できる」と信じて研究に励みました。しかし、現実は甘くありませんでした。砂、雨、瓦礫といった複雑な自然界の前に、私たちが積み上げてきた緻密な理論は無力だったのです。そこで辿り着いたのが「開いた設計」という概念です。環境に力で抗うのではなく、水のようにしなやかに環境に馴染むこと。高度な「脳(知能)」を作るだけでなく、身体そのものの構造を工夫し、環境との相互作用を上手く利用する。そうすることで、どんなに過酷で予測不能な場所でも、生き物のように柔軟に動けるロボットが作れると確信しています。

貝原

お二人とは少し立ち位置が異なりますが、私の「社会情報学研究室」は「社会」そのものを研究対象にしています。ベースにあるのは「システム工学」という、複数の要素をいかに賢く動かし、効率的な「仕組み」を作るかという学問です。 研究を始めて40年になりますが、最初の20年は「物」が対象でした。いかに速く、安く、良い製品を作るかという生産システムの構築です。しかし、次第に私の興味は「人」へと移っていきました。人を繋ぐシステムとは何か、人々は物(製品)にどんな「価値」を求めているのか。いわば「価値創造のものづくり」ですね。 そして現在、その先にある「社会」へとフェーズが広がりました。複数の人間が共に生きる社会において、情報を活用していかに豊かな暮らしを作るか。最近では、物理空間の情報を仮想空間上に再現・構築するデジタルツイン技術を活用して、社会シミュレーションを行っています。シミュレーションは単なる予測ではありません。なぜその結果になったのかという「因果」を可視化し、それをもとに「将来はこうしていこう」とみんなで議論するための共通言語であり、デザインツールなのです。現在は自治体とも連携し、防災を含めた「ウェルビーイングな街づくり」にも活動を広げています。

THEME02

リスクを恐れぬ好奇心が、世界を変えるイノベーションを呼ぶ。

テクノロジーが激変し、学びの環境も日々進化しています。次世代の「知」を担う高校生は、今、どのような心構えでいるべきでしょうか。

大須賀

大学での学びについて、私はあえて「大学は最高の暇つぶしの場である」と言いたいですね。驚くかもしれませんが、大学の先生を指す「スカラ(Scholar)」の語源は、古代ギリシャ語で「暇人」を意味する言葉なんです。これは決して「サボって遊ぶ」という意味ではありません。何かの役に立つかどうかという損得勘定を抜きにして、自分の「好奇心」だけを羅針盤に、何年も一つの問いを考え続けられる自由で贅沢な存在、という意味です。先ほど松野先生が「消えるロボット」とおっしゃいましたが、実はロボット工学において「ロボットとは何か」を定義するのは非常に難しい。もともとロボットという言葉は、1920年の戯曲で作られた造語であり、実物があって名付けられたわけではないからです。時代の最先端を追いかけ、その先にうっすら見える蜃気楼のような存在がロボットです。私はロボット工学科にいますが、この分野にはまだ学問としての「芽」が出たばかり。正解がないからこそ、一生をかけて探求する価値があると思っています。

貝原

大須賀先生のお話、非常に共感します。私はメジャーリーガーの大谷翔平選手の「今後も大谷選手としてありつづけるためには」との問いに対する「趣味としての野球を消さないこと」という回答が大好きです。プロとしての結果が求められる厳しい世界に身を置きながらも、根底にあるのは「野球が大好きだ」という少年の日の瑞々しい好奇心。研究も全く同じなんですよ。最近の学生さんは賢くなりすぎて、挑戦する前に「これをやってリターンがあるのか」とリスクを計算しがちです。しかし、そんなふうに守りに入ると、本当に新しいことは生み出せません。リスクを顧みず、「これが楽しいからやるんだ!」と突き抜ける情熱こそが、ノーベル賞級の発見や社会を劇的に変えるイノベーションにつながるのです。 研究には必ず苦しい局面がありますが、誰も知らない真理に初めて触れた時のワクワク感があれば、必ず乗り越えられます。受験勉強のように正解(How)を暗記するだけでなく、「なぜ(Why)?」と問い続ける楽しさを、大学でぜひ味わってほしいですね。

松野

高校生から「ロボットを作るなら、今どんな勉強をすべきですか?」とよく質問されます。数学や物理はもちろん大切ですが、私は「とにかく幅広く勉強していくことが良いと思う」と答えています。なぜなら、ロボットがいざ社会に出るとなると、工学だけの知識では足りないからです。例えば、ロボットが事故を起こした時の責任をどう考えるかという「法律」の問題、人間が違和感なく接するための「芸術や心理学」、そして社会に普及させるための「経済学」。今のロボット開発には、あらゆる分野の専門家が関わっています。 大谷選手の例えもそうですが、ノーベル賞を獲るような研究者は「無用の用(一見無駄に見えるものにこそ価値がある)」を大切にします。高校時代に一見関係なさそうな分野まで幅広く学んでおくことは、将来、自分とは違う専門性を持つ人たちと「共通の言語」で対話するための最強の武器になります。その「総合知」こそが、一人では成し遂げられない大きな仕事を可能にするのです。

大須賀

松野先生がおっしゃった「総合知」を、実践の中で磨く場が本学にはあります。それが「PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)」です。 例えば「鳥人間コンテスト」や「ソーラーカー」のプロジェクトには、機械、電気・電子、情報など異なる学科の学生たちが集まります。設計や回路など、役割を分担しながら、お互いに教え合って一つの目標に挑みます。教科書の知識を身につける「座学」も大切ですが、それだけでは応用力がつきません。 仲間と泥臭く試行錯誤し、自分の手を動かして「あっ、あの授業で習った知識は、ここでこう使うのか!」と気づいた瞬間、バラバラだった知識は初めて生きた「知恵」に変わります。大工大には、こうしたチャンスがいたるところに転がっているので、ぜひ実践力を磨いてほしいですね。

THEME03

多角的な知恵を融合した「総合知」で挑む、
新しい防災プロジェクト。

個別の研究領域を越えて、大阪工業大学という一つのチームとしては、今後どのように歩みを進めていかれるのでしょうか。

松野

私たち3人には「阪神・淡路大震災」という非常に強い共通の原体験があります。私自身、当時は神戸におり、瓦礫の下で大切な教え子を亡くしました。その時に味わったどうしようもない悔しさが、私を子どもの頃から憧れてきた宇宙開発の道から、誰もやっていないレスキューロボットの研究開発へと突き動かしたのです。それから30年。東日本大震災や能登半島地震など、私たちは幾度も過酷な災害に直面してきました。研究はまだ道半ばですが、今こそ個別の研究室という枠を飛び出し、本学の総力を結集すべき時だと考えています。

大須賀

そこで現在、私たちが中心となり、オール大工大のプロジェクトとして「災害対応研究センター」を立ち上げようとしています。災害という巨大な困難は、ロボット単体や一つの技術だけで解決できるほど甘いものではありません。土木や建築といったインフラの知識、救急救命の医学的知識、そして被災者の心のケアまで、さまざまな専門性の融合が不可欠です。このセンターでは、学部、学園、あるいは高校と大学の連携など、あらゆる垣根を越えた一大プロジェクトとして動かしていきます。

貝原

これまで日本社会は「豊かさ」を求めて発展してきましたが、これからはその豊かさを守るための「防災や減災」が極めて重要な意味を持ちます。 例えば、有事の際に普段使っているコンビニをどう活用するかといった、日常の延長線上にある「仕組み」を作っておくことが、結果として防災力を高めることにつながります。また、災害大国の我が国においては、避けようがない自然災害からの速やかな復旧や復興を可能とするレジリエンス社会の構築も重要です。そのための社会制度を整えるためにも、我が国には、各領域の知恵を編み上げた「総合知」が不可欠になるでしょう。

松野

具体的な目標の一つは、日本にはまだ数少ない「災害対応ロボットを本格的に実験できるフィールド」を創出することです。 災害現場を再現した実証の場を設けることは、研究を加速させるだけでなく、社会全体からも強く求められています。多様な研究領域の知見が集まり、最新の施設・設備が揃う大阪工業大学の特色を最大限に活かして、このプロジェクトを力強く推し進めていきたいと考えています。すぐには答えが見えない難問に立ち向かうこのステージに、若い学生の皆さんにもぜひ参加してほしいですね。

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