EMMを多入力多出力システムに適用しようとするとき、厄介な問題が出てきます。伝達関数の分母多項式と分子多項式の次数の差(相対次数と呼ばれます)がEMM法では重要なのですが、この次数差を表すのに一入出力系では適当な漸近安定な多項式を使えば良いのですが、多入出力系では多項式を要素とする行列となります。これがインタラクタ行列と呼ばれるのですが、その計算はかなり大変です。
伝達関数のパラメータが良く分からない状況で入出力のデータから制御器を推定しようという、適応制御では制御器の計算のためにあまり時間を割くことができません。したがって、インタラクタの計算は簡単であることが望ましいことから研究は始まりました。そして、ある種の代数方程式を擬似逆行列を使って解く程度の計算で求める方法を開発しました。
インタラクタ行列は、自由に設置できるパラメータをある程度、持っていますので、私たちの研究室で開発された方法以外のでも求められますし、値も変わってきます。けれども、私たちの方法のインタラクタは一つの便利な性質を持っています。そして、その性質は、ある種の最適制御問題と深く関係しているようなのです。
インタラクタと最適制御、一見何の関係もないようなこれらの問題が実は密接に関連している、こういったことを発見するする度に自然って不思議だなあ、考えるって素晴らしいなあと思います。