ごみ焼却の燃焼計算と排ガス計測の計算例(授業: 廃棄物工学)
授業の紹介です。
燃焼計算は、ごみの焼却処理を題材としたマスバランス推定の基本です。燃焼空気を与えて、C→CO2、H→H2O、S→SO2、N→N2、Cl→HClの化学変化をするときの量論計算をします。
もう一つは排ガス計測です。流速測定の原理から、大気汚染物質計測までを演習を通して、実践的理解を助けます。
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有機ハロゲンのオンライン計測によるダイオキシンモニター
ごみ焼却で生成される無数の有機塩素化合物のうちの一つがダイオキシン類です。ガス中に存在する有機性の塩素を総量で迅速に計測する方法を開発しました。加熱脱着気相試料導入ーヘリウムプラズマによるハロゲン原子発光分析法です。
焼却開始時の不安定な時間に、一時的に、ダイオキシン類が生成します。それを有機塩素のオンライン計測で捉えることに成功しました。
このオンライン計測をにらみながら、運転続けることで、廃棄物焼却でのダイオキシン類生成を最低限に抑えることができます。
環境条件下での化学平衡ー環境熱力学ー
有害物質の挙動を推定する上で、熱力学を適用した理論的推定は不可欠です。特に、「揮発するのか」「揮発するとすれば、その促進・抑制因子は何か」が重要です。
熱力学データベース・計算ソフトウエアでは、何らかの答えをはじき出してくれますが、私たちは、熱力学データ用いて、自分で計算しています。
図は、焼却排ガスのガス冷却域(700 K)で、酸素濃度を10%に固定し、塩素活量を変化させて、水銀の各化合物の相対的な優勢度を比較したものです。
この図によれば、塩素活量Cl2 = 10^(-10)を境界として、最優勢な化合物が塩化物と酸化物とで入れ替わることがわかります。石炭と廃棄物の燃焼で大きく違う点は、塩素の有無です。この相違点に着目した排ガス処理・灰処理を開発しています。
活性炭に捕集された有機フッ素の熱化学的破壊
撥水(はっすい)・防水に効果を発揮する有機フッ素化合物(代表的なものはテフロン(R)です)は、C-F結合を多く含み、自然環境中での分解はきわめて困難です。水処理では、活性炭吸着で水から取り除くことはできますが、そのあとどうなるのでしょう。
活性炭吸着は、いつまでも続きません。吸着飽和に到ると、新しいものに交換し、使用済み活性炭は、熱処理で再生します。そのときに、活性炭から再び有機フッ素化合物が大気へ放出されるのではないかという心配があります。
私たちは、活性炭にPFOA, PFOSなど有機フッ素化合物を吸着させ、これを熱処理し、Fの収支を調べました。熱処理温度が700℃程度では無機化は不十分ですが、1000℃で大気へ再放出される有機状Fを不検出にすることができました。さらにFの収支を高める研究を進めています。
循環基盤工学とは
■循環基盤工学とは■
循環基盤工学は、自然・人間社会での物質循環を持続可能とするための総合技術です。計測、物質・エネルギー収支、環境熱力学を基礎として、資源循環・エネルギー変換で、自然の摂理にかなう方法を実現します。
公害防止の歴史を踏まえ、循環残渣は資源である一方、リスク管理の対象と見なされ、二極観的最適解を追い求めてきました。しかしいま、天然リスクに関する知見が増え、またエネルギーへの関心の高まりから、公害防止に最善を尽くし、自然の浄化機能を活用し、そして生活上の安心を求めて、持続可能制限下での満足解を求めようというものです。
詳しくはこちらへ__http://www.oit.ac.jp/env/cardamom/~wastcoex/__