大阪工業大学 環境工学科

水代謝システム研究室

Laboratory of Urban Water Metabolic System

研究室概要

私たちが生活するうえで必要不可欠な水。
水は、地表面積の約7割を占めています。しかし、そのほとんどは、海水や極地に存在する氷で、私たちが容易に利用できる淡水はごくわずかしかありません。
水は、その質を変えながら、およそ2~3週間のサイクルで地球上を循環します。私たちは、そのダイナミックなサイクルの中で様々な処理を行い、水を繰り返し利用しているのです。
水代謝システム研究室では、この貴重な水を有効に、安全に、かつ持続的に活用するため、

「水資源と水利用のシステム」

について研究しています。

研究内容

研究課題

■ 淀川流域における都市代謝有機物の挙動解析
■ ANAMMOXプロセスを用いた窒素除去技術の開発
■ 残留塩素に依存しない新しい水供給システムの研究

淀川流域における都市代謝有機物の挙動解析

一般に、河川や湖沼などに含まれる天然有機物は生物学的に難分解性で、生活排水に含まれる有機物は易分解性です。浄水場や下水処理場では、それぞれの水に応じた処理が行われますが、必ずしも万能ではありません。
水が繰り返し利用される河川流域では、上流で混入する下水放流水の量と質が、下流の水道水質に大きな影響を及ぼします。淀川流域のように、下水放流水が多く混入している河川では、特にその水質を慎重に管理する必要があります。
通常、有機物の測定には、BODやCODといった酸素消費特性に基づく総括的な指標が用いられますが、それだけでは有機物の「質」を十分に捉えることができません。
そこで、淀川流域に出入りする有機物を水処理特性や生物分解性、微生物安定性などに基づいて多面的に評価し、持続可能な水利用システムの構成とそれに必要な流域管理のあり方について研究しています。

左: 水質分析風景  右: 全有機炭素計

ANAMMOXプロセスを用いた窒素除去技術の開発

嫌気性アンモニア酸化(Anaerobic Ammonium Oxidation, ANAMMOX)は、無酸素条件下で亜硝酸を電子受容体とし、アンモニア性窒素を直接窒素ガスに変換する生物反応プロセスです。この反応を担うANAMMOX細菌は、増殖速度が遅く、環境中では優占しない特殊な微生物ですが、最近の研究で、海洋中で起こる脱窒反応(水中の窒素成分を気体の窒素ガスに転換する反応)の約50%に寄与し、地球上の窒素循環に大きく関係する大変重要な微生物であることがわかってきました。
このANAMMOXプロセスを廃水処理に適用すると、従来の硝化・脱窒法(好気性の硝化細菌と従属栄養性の脱窒細菌を利用した生物反応プロセス)のように酸素や有機物を供給する必要が無く、また、窒素除去速度が飛躍的に向上します。
水代謝システム研究室では、ANAMMOXプロセスを活用した新しい窒素除去技術の開発に取り組んでいます。特に、メタン発酵やアルコール発酵などの副産物として生成される高濃度アンモニア含有廃水を対象とし、高速・省エネルギー処理を実現する画期的なシステムを目指しています。

左: ANAMMOXリアクター 右: イオンクロマトグラフ(窒素分析)

残留塩素に依存しない新しい水供給システムの研究

水道水は塩素で消毒して供給されていますが、それでも1cm3あたり数百~数千個の割合でバクテリアが生息しています。これは、浄水場で除去しきれなかった成分をバクテリアが消費し、パイプラインで増殖しているためです。この増殖がひどければ、水のにおいや味といった品質が低下するだけでなく、レジオネラなどの病原微生物による汚染の危険性が高まります。塩素の濃度を高めれば消毒効果は上げられますが、逆にトリハロメタンによる発ガンの危険性を高めてしまいます。
そこで、有機物や微粒子などを制御することにより、少ない残留塩素でもバクテリアの増殖を抑制できる新しい配水水質管理手法について研究しています。
写真に示すバイオリアクターに水道水を通水し、表面に形成されるバイオフィルムを分析します。

左: 微生物の培養風景 右: バイオリアクター

スタッフ

教授 笠原 伸介
● 所属 工学部 環境工学科
● 所在 大宮学舎 10号館6階
● 学位 博士(工学)
● 専門 水環境工学,都市水供給システム
● 学会 日本水道協会,日本水環境学会,土木学会,廃棄物資源循環学会
● 受賞
・日本水環境学会関西支部創立30周年記念支部功労表彰(2014)
・日本水環境学会関西支部奨励賞(2009)
・第45回環境工学研究フォーラム優秀ポスター発表賞(2008<共著>)
・日本水道協会有効賞(1999)
・土木学会年次学術講演会優秀講演者賞(1997,1995)
● 委員
・高槻市下水道事業審議会委員(2021)
・富田林市水道事業ビジョン検討委員(2021)
・東大阪市上下水道事業経営審議会委員(会長)(2021-)
・京都府営水道事業経営審議会専門委員(2020-2022)
・生活基盤施設耐震化等交付金事業評価に関する意見聴取委員会(大阪府)委員(2020-2021)
・大東市水道ビジョン策定委員(委員長)(2020)
・東大阪市新水道ビジョン懇話会委員(座長)(2019-2020)
・京都府営水道事業経営審議会専門委員(2018-2019)
・富田林市上下水道経営戦略等策定部会員(部会長)(2018-2019)
・河内長野市上下水道事業経営懇談会委員(座長)(2017-)
・枚方市上下水道事業経営審議会委員(2016-)
・八幡市水道事業経営懇談会委員(会長)(2015-)
・枚方市環境影響評価審査会委員(副会長・公害部会長)(2015-2021)
・大阪広域水道企業団水道問題研究会委員(2013-2019)
・箕面市水道事業及び公共下水道事業運営審議会委員(副会長)(2008-)
・富田林市水道ビジョン策定委員会委員(2016)
・高槻市公営企業審議会委員(2016)
・大阪市水道局入札契約等審議委員会委員(2009-2011)
・羽曳野市石川浄水場更新に伴う浄水処理検討委員会委員(2009-2010)
・枚方市建設事業評価委員会委員(2008-2010)
● 業績 大阪工業大学 「研究者総覧」
● 授業 反応工学Ⅰ、反応工学Ⅱ,上下水システムⅠ,水環境施設特論、水質変換工学特論
● 趣味 カメラ,自転車,ウイスキー

<連絡先>
〒535-8585 大阪市旭区大宮5丁目16番1号
TEL:06-6954-4165(直通)
FAX:06-6952-6197(事務室)
E-mail:shinsuke.kasahara(at mark)oit.ac.jp

リンク

学内

大阪工業大学工学部環境工学科 http://www.oit.ac.jp/env/
大阪工業大学 http://www.oit.ac.jp/

学協会

(公社)日本水道協会 http://www.jwwa.or.jp/
(公社)日本水環境学会 http://www.jswe.or.jp/
(公社)土木学会 http://www.jsce.or.jp/
International Water Association http://www.iwahq.org/

官公庁

環境省 http://www.env.go.jp/
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
国土交通省 http://www.mlit.go.jp/
農林水産省 http://www.maff.go.jp/

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