大阪工業大学 環境工学科

バイオサイクル研究室

BioCycle Lab.

研究室概要

 本学科で学ぶ内容は大きく2つに分類されます.ひとつは環境共生・修復に関する予測やプランニングを学ぶ分野です.もうひとつは環境汚染の制御に関する技術を学ぶ分野です.

 バイオサイクル研究室は後者であり,家庭や工場などから排出される,生ごみや排水を対象としています.本研究室では,これらの汚染物質を,微生物が持つ環境浄化能力を使って処理する技術を研究しています.

 例えば,生ごみからバイオガスを生産する技術は,化石燃料の使用を減らした循環型社会に貢献することができます.また,循環利用が難しい場合は,適正な処理を行うことで,環境への負荷を最小限とすることができます.

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バイオサイクルのイメージ

2023年度研究テーマ

・ 気泡生成型リアクタによる消化ガスの高負荷対応型バイオメタネーション
・ 消化汚泥返送工程を組み込んだ下水汚泥の嫌気性消化による短HRT運転
・ マイクロバブル生成ノズルを用いた活性汚泥法での曝気風量低減可能性の検討

研究テーマ紹介 01

バイオメタネーションによる消化ガスの高濃度メタン化

Upgrading of biogas by Biomethanation in anaerobic digestion


令和2年度科学研究費助成事業(課題番号20K12245)



バイオメタネーション導入の背景


下水汚泥の嫌気性消化により生成する消化ガスはメタンを含んでおり電気や温水として有効利用することができる。FIT制度における買い取り対象となっており、太陽光発電が14円/kWhと下がっているのに対して39円/kWhと有利な売電価格となっている。そのため、嫌気性消化槽を有する下水処理場に発電設備を設置して売電する事例が増加している。

一方、普及が進んだ太陽光発電は日中しか発電できず、電力需要のピークとはずれがある。そのため今後さらに太陽光の普及が進めば日中の発電ピークでの電力受け入れ拒否が顕在化することが懸念されている。これら余剰電力を有効利用する手段として、水の電気分解による水素の生成が検討されている。今後の水素インフラの整備によって受け入れ手段の主力になることが期待されている。

メタネーションとは二酸化炭素にその4倍量の水素を混合させて触媒で反応させることによりメタンに変換させる技術であり、製鉄所や火力発電所、焼却場など、大量に発生する二酸化炭素を捕集して変換するCCUS(炭素捕集と有効利用)が次世代の温室効果ガス排出削減策として期待されている。



バイオメタネーション技術の概要


バイオメタネーションは微生物によって二酸化炭素をメタンに変換する技術で、バイオリアクターに微生物を保持し、二酸化炭素と水素の混合ガスを吹き込むことで行うことができる。比較的小規模な施設での利用に適しており、下水処理場の消化ガス対象として優れているばかりか、メタネーションを行う微生物は前段の嫌気性消化の汚泥を使用することができ、下水処理場と親和性の高い手法である。

消化ガスの成分はメタン(50~60%)と二酸化炭素であり、発電所などの施設のように酸素を含まないため捕集の工程が不要である。メタネーションによりメタン濃度を向上させることができれば、熱量の向上により発電等の利用価値が高まる。



本研究の課題


バイオメタネーション技術は触媒法と較べて温和な条件(37℃程度)で行うことができる利点があるが、その反応速度の遅さからリアクタが大きくなる欠点がある。反応速度を高めるためには水素を液中に効率的に溶解させる必要がある。

本研究では水素の溶解方法にマイクロバブル散気装置を使用することで溶解効率を向上させ、その結果反応率を向上させて高負荷運転を可能にする手法を検討する。


詳細は下記URLをご覧ください(英語)

http://www.oit.ac.jp/env/cardamom/~biocycle/Biomethanation_Kaken_2020/

メタネーションシステム

研究テーマ紹介 02

生物学的エタノール化反応を前処理に用いた メタン発酵に関する研究

 食品系廃棄物を対象としたメタン発酵は、廃棄物処理とエネルギー生産の両面を解決できる技術として注目されています。メタン発酵とは嫌気性微生物を使って有機物を分解する生物処理プロセスです。分解の過程でバイオガスが生成し、これにはメタンが約60%含まれており、ボイラや発電に利用されています。
 当研究室では、飲食店の残飯にご飯などの炭水化物類が多く含まれていることに着目しました。これを糖化・エタノール化させることは既に行われていますが、本研究では通常のようにエタノールを取り出さず、そのままメタン発酵を行わせます。そうすることでメタン濃度の高いバイオガスを得ることができます。通常は炭水化物からのバイオガス中メタン濃度は約50%ですが、糖化・エタノール化を行ってからメタン発酵を行うと、理論的に75%とすることができます。
 本研究では、上記の理論通りに反応が進むかどうかを確かめるための実験を行っています。
(JSPS科研費26340105。発表論文:土木学会論文集G(環境),Vol.71,No.7,Ⅲ_47-55,2015 Journal of Material Cycles and Waste Management, Vol.21, pp.258-264, 2019)

研究テーマ紹介 03

OITキャンパスエコプロジェクト

 本プロジェクトは大学のキャンパスを社会と見立てて、バイオマスや太陽光などからの「創エネルギー」、「畜エネルギー」、「省エネルギー」およびそれらを最適化する「スマートコミュニティシステム」の要素技術を学び深めるプロジェクトです(詳しくは専用ページをご覧ください)。
 当研究室が担当しているのは、微生物の働きを利用して食堂生ごみからバイオ燃料を生産する「創エネルギー」プロセスです。生ごみは大きく分けて調理くずと残飯に分類されます。それらは、炭水化物、タンパク質、脂質などから構成されています。バイオ燃料プロセスのうち、”メタン発酵”、”水素発酵”、”エタノール発酵”、”微生物燃料電池”に取り組んでいます。
 メタン発酵などは農村部では実用化された技術ですが、廃液の利用先や施設の設置場所がない都市部では普及していません。生ごみなどの食品系バイオマスの大半が都市部で発生していることから、本研究室では都市部での普及に向けた課題をテーマとして取り組んでいます。

年間スケジュール

3月:卒研配属

4~5月:基礎知識の習得、分析練習、テーマ紹介

6月:テーマ決定

9月:中間報告

12月:実験終了(実験系のテーマ)

2月:卒研発表会、卒業論文提出

卒業生の進路

バイオサイクル研究室の卒業生の進路です.

2022年度
 ㈱東京設計事務所 ㈱クリタス 月島テクノメンテサービス㈱ 神安土地改良区 ㈱セリオス
 パナソニック環境エンジニアリング㈱ 日本水工設計㈱ 日立造船㈱

2021年度
 ㈱クリアウォーターOSAKA タナカ理研㈱ 三水コンサルタント㈱ 東興ジオテック㈱ ㈱ダイダン
 日本メンテナスエンジニヤリング㈱ 東洋検査工業㈱ ㈱東京設計事務所 アクセンチュア

2020年度
 日本水工設計㈱ ㈱極東技工コンサルタント ㈱西原環境 ㈱クリアウォーターOSAKA
 ㈱丸島アクアシステム ㈱クリタス ㈱総合水研究所
 パナソニック環境エンジニアリング㈱


2019年度
 日本水工設計㈱ オリジナル設計㈱ ㈱クリタス
 大阪工業大学大学院

2018年度
 オリジナル設計㈱(2名) 極東技工コンサルタント(株)(2名)
 ㈱東京設計事務所 日本メンテナスエンジニアリング(株)

2017年度
 クリアウォーターOSAKA㈱ 月島テクノメンテサービス㈱
 ㈱東京設計事務所 日本水工設計㈱ オリジナル設計㈱

2016年度
 ㈱神鋼環境ソリューション ㈱石垣 クボタ環境サービス㈱ ㈱西原環境 パナソニック環境エンジニアリング㈱
 クリアウォーターOSAKA㈱ 月島テクノメンテサービス㈱
 ㈱東京設計事務所 オリジナル設計㈱ ㈱三水コンサルタント ㈱極東技工コンサルタント

同窓会

川島、石川、笠原、古崎研究室卒業生の会
旭水会(きょくすいかい)

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環境会
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教員紹介

古崎 康哲
(こさき やすのり)

1971年生まれ
1990年大阪府立池田高等学校卒業
1994年大阪工業大学卒業
1999年大阪工業大学博士後期課程卒業
   上下水道コンサルタント会社を経て
2007年より現職

趣味:釣り,水泳,家庭菜園

次のような活動にも参画しています.
株式会社エコソリューションネット
新活性汚泥技術研究会(NAST)

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