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カシオミニ

答え、一発〜♪
CASIO『カシオミニ』
1972, 12,800円

カシオミニ

解説

それまで電卓と言えばオフィスに一台、安くても4、5万はする高価な機器 というのが常識だった時代に驚愕の 12,800 円のプライスタグを引っ提げて登 場した 真正レジェンド電卓。 あまりの安さに業界は震撼し、「カシオ・ショック」 という言葉が生まれました。マーケティングでもまさかの個人需要を狙い、 「答、一発〜♪」の TV CF を打ちまくり、 電卓?なにそれ?というような町の文房具屋 さんまでをも販路として開拓したのです。 結果、本機は売れに売れ、一年弱で見事 100 万 台を達成。(ちなみにあの初代 PlayStation の当初のキャッチコピーが「行くぜ 100 万台」。関係ないですが。) このカシオミニが引き金となって、電卓は日本で爆発的に普及し(いわゆる「電 卓戦争」の勃発)、それまではアメリカの航空・軍需がメインだった半導体需要 を、規模を拡大しつつ民生品に転換し、ひいては日本のエレクトロニクス産業 を圧倒的な世界一 (当時) に押し上げ、ついには我が国を世界第二位の経済大 国 (当時) に至らしめた、 「風が吹けば桶屋が儲かる」における風と言えましょう。 なお、安さとマーケティングは凄かったのですが、 技術的には必ずしも革新的とい うわけでもなかったらしく、コスト削減のため、 当時ですらあり得ないと思われ ていた、わずか 6 桁の表示&入力は整数のみ という漢らしい割り切りよう でした。(最初は社内でもこんなもの売れっこねーよと思われていたとか。) なお何かとネタにされる(?)6桁ですが、 当初は「ボーリングのスコア計算ができる電卓」というコンセプトで 4桁の予定だったそうです[1]。そのまま4桁で開発が進めばもっと面白いものに なっていたかも知れませんが、きっとこんなに売れて歴史を動かすことは なかったでしょう。(6桁で良かった。)

そんなこんなでカシオミニは誕生 40 周年を記念して、 カシオからミニチュア復刻版も作ら れるなど、時代を超えて愛されている電卓です。(復刻版は残念ながら小林は 持っていません。)

補足

  • 同時表示は6桁ですが、乗除計算などの結果は最大12桁まで保持でき、 三角キーで画面を切り替えて表示できます。ある意味標準的な 8桁電卓より高性能ですね。
  • 入力は整数のみですが、わり算の結果は浮動小数点数として表示 されます。int 型専用機ではありませんのでご安心を。
  • カシオミニに少し遅れてシャープも対抗馬 EL-120を出しました。 こちらは1万円切りの9,980円。さらに驚くべきことに カシオミニの表示6桁に対して 表示3桁 (内部12桁)とまぁ、 もう価格のためなら何でもやるぞという強い決意を感じます。
  • 「カシオミニ」はこの初代だけでなく、非常にたくさんの機種が 出ています。当然それぞれにCM-60xのような型番がついている のですが、この初代機だけはそれらしい型番がないんです。 電卓に型番がないなんて、そんなことあり得るのかなぁとも 思いますがどこを調べても出ていません。誰か知っていたら 教えてください。

参考文献

  1. 樫尾幸雄, 電卓四兄弟 カシオ「創造」の60年, 中央公論新社, 2017年, ISBN978-4-12-004969-9