[大阪工業大学は限界を超えていく] Series04 バイオものづくりセンター 持続可能なものづくりへのカギは人づくりから

[ 未来をつくる人材を社会へ ]

石油由来のものづくりから、生物の働きを生かす持続可能な「バイオものづくり」へ。
産業構造の転換が求められる一方で、橋渡しとなる人材が不足している。
そこで今年、大阪工業大学が開設した新施設が「バイオものづくりセンター」だ。

問題は社会実装への プロセスを担う人材不足

「バイオものづくり」とは、微生物や細胞、酵素などの働きを利用し、石油由来のものづくりを生物資源由来に代替する技術のこと。有用物質生産とも呼ばれ、素材、燃料、食品、医薬品など幅広い分野への広がりが期待されている。
ただ日本では、生物資源の研究者は多い半面、その成果を大量培養、大量生産へとつなぐ「プロセス工学」に従事する人材が不足している。バイオものづくりセンター長の長森英二教授(工学部生命工学科)によると「設備が揃わない、成果が評価されにくいなどの理由で、多くの人がこの分野から離れていきました」。自身が続けられた理由については「反骨精神ですかね」と笑う。
「仲間」を増やすため、長森教授は2021年、大宮キャンパス内の一室に「バイオものづくりラボ」を立ち上げた。狭小空間ではあったが、試作に使いたいという企業が相次ぎ、研究実績を重ねた。そして今春、大学の本格的な施設として誕生したのが「バイオものづくりセンター」である。日本随一の多彩なバイオリアクターによる培養機能と、目的物の物性を踏まえた分離精製機能を兼ね備えている。

企業の試作支援と 培養技術者育成の拠点

本センターの役割は大きく2つある。一つは企業のバイオ生産プロセス開発の支援だ。0.25L×40連などの小規模から、90Lの大規模までのバイオリアクターを揃え、全てにオートサンプラーを完備。大量の培養データの蓄積や解析を支援するオリジナルアプリ「BMDS」も開発している。企業は自社で何億円も設備投資をする前に、ここで試作できる。さまざまな条件下での同時比較や、段階的なスケールアップも可能で、利用企業は約30社を数える。
もう一つの役割は人材育成。社会人向けに、バイオリアクターの使い方を教える「培養技術者育成セミナー」を実施している。オンデマンドで座学受講後、本センターで実技を行う。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の特別講座にも認定されているため、1企業2人までは無料。受講企業は約150社に広がった。もちろん企業だけでなく、生命工学科の学生らの実践的な研究の場としての役割もある。
「工学は社会実装してこそ価値がある」と長森教授。学生も技術者も、ともに学び、ともに成長する。その先に、日本のバイオものづくり産業の隆盛があるはずだ。

2026年8月28日付・日本経済新聞大阪本社版より転載
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