電卓-ポケコン間の遺伝子流動
SHARP『EL-5120』
1993, 7,800 JPY
解説
これはシャープのプログラマブル関数電卓なのですが、いろいろな意味で ちょっとポケコンぽい* ところが (シャープのポケコンに育てられたぼくには)とても 心地よく、 眺めていてもいじっていても癒やされます。
まずはデザイン。 個人の感想になってしまいますが、 ‘80年代のシャープの関数電卓・ポケコンは アルミを使った高級感ある上質なデザインで大好きです、今でも。 本機は'90年代のシャープを代表するデザインで、 高級感は薄れたものの、直線と直角を基調とした形状と、 濃いグレーの本体に原色系のくっきりした アクセントをちりばめた(‘90年代視点で)なんとも 未来的なカッコよさ があります。 (ちなみに'00年代は安っぽさが増した上に無意味な曲線を多用して 個人的には全くイケてません。‘10年代以降はまあ可もなく不可もなく、 ふつう。この傾向はCASIOも同じか。) 関数電卓にしては本体サイズが小さく、アスペクト比が1に近いところも 個性的で和みます。
次に使い勝手ですが、3行表示の液晶が(実はフォントが5x5ドットと ショボいながらも)「上にスクロールするように」使えます。 ちょっと説明難しいのですが、 大画面のグラフ関数電卓以外、多くの電卓は新たな入力をすると、 その都度画面をクリアしちゃうのですが、 本機はそうじゃなくて最下行にどんどん追加入力する方式で、 これがやっぱりポケコンぽい。一つ前の計算結果が画面に残っている だけで精神的な緊張がほぐれます。
そして最後にBASIC。 機能はものすごく少ないのですが、 文法がBASIC的にマトモ です。 電卓のプログラミング言語は変態的なものが多く、 とても使えるようになる気がしないのですが、 本機はマニュアルをロクに眺めずとも何かプログラムが 組めちゃいます。素晴らしい。これで命令が、 せめて初期のPC-12シリーズのポケコンくらいあったらもう最高 なのですが、それを言うのは野暮ってもんで…。
EL-5120 BASIC Quick Reference
command | description | example |
---|---|---|
var=val |
変数varに値valを代入する。 | A=42 |
PRINT var |
変数varを表示する。 | PRINT X |
PRINT"str |
文字列strを表示する。 | PRINT"HELLO |
INPUT var |
変数varに数値を入力する。 | INPUT A |
WAIT num |
num 秒待つ。num を省略した場合はキー押下待ち。 |
WAIT 42 |
REM comment |
コメント | REM MAIN |
END |
プログラムを終了する。 | END |
LABEL lbl |
lbl というプログラム分岐処理ようのラベルをつける。 |
LABEL LOOP |
CLRT |
画面を消去する。(TはテキストのTでグラフ関数電卓との互換性維持のためTがつく。) | CLRT |
IF cond GOTO lbl |
条件cond が成立したらラベルlbl にジャンプ。(IF で使えるのはGOTO のみ) |
IF L<=0 GOTO GAMEOVER |
GOTO lbl |
ラベルlbl にジャンプ。 |
GOTO LOOP |
GOSUB lbl |
ラベルlbl で始まるサブルーチン(←最近の子はわかる?)にジャンプ。 |
GOSUB DEMO |
RETURN |
GOSUB したサブルーチンから帰る。 |
RETURN |
数当てゲームの例
REM KAZUATE
R=INT (RANDOM*10)
LABEL LOOP
WAIT 1
PRINT"0-9,WHICH
INPUT A
IF A<R GOTO LG
IF A>R GOTO SM
PRINT"BINGO!
END
LABEL LG
PRINT"ANS IS LARGER
GOTO LOOP
LABEL SM
PRINT"ANS IS SMALLER
GOTO LOOP