学科紹介:応用化学科 教員LETTER

環境に負荷をかけないものづくり

応用化学科 教授 野村 良紀 NOMURA Ryoki

大阪工業大学工学部応用化学科合成化学研究室 野村良紀

 振り返ってみるとこれまで30年あまり研究に携わってきたことになります。その間,以下(1)〜(3)に示すようにグリーンケミストリー12原則の中で,特に,6) エネルギー消費は,環境や経済への影響を考えて最少にする, 7) 原料物質は,技術的,経済的に実行可能な限り,枯渇性ではなく再生可能なものを使う,9)量論反応よりも選択的な触媒反応がよい,の実現を目指して努力していきたということができます。

(1) 二酸化炭素を直接原料とする有機合成(触媒開発)
 文字通り枯渇性でない炭素資源として,二酸化炭素を利用しようというものですが,お手本は植物が行っている光合成です。最初の間は,大気圧の50倍という高い圧力のもとでしか反応が進みませんでした。それでも,従来の方法に比べると反応温度は100 °C以上低くすることができました。だんだんと触媒の改良が進み,最終的には加圧することなく,空気中に存在する二酸化炭素を原料として尿素誘導体などを合成できるようになりました。

(2) ソフトエネルギープロセスによる半導体,エレクトロニクセラミックス製造法の開発
 半導体やエレクトロニクセラミックスを実用化するためには,非常に薄い膜(薄膜)やナノ粒子の形に加工しなければなりません。そのためには,通常,500 °C〜1,000 °C以上の高温,あるいは大気圧の1万分の1以下の低圧(高真空)といったエネルギーを多量に消費する条件が必要です。これをできる限り,常温常圧に近づけようとしたものです。対象とした半導体などは,酸化物や硫化物が主体となりますが,原料化合物を工夫,シングルソース化,することで,高導電性の酸化インジウム薄膜が常圧300 °Cで製造できるようになりました。さらに,硫化物薄膜については室温から80 °C程度の温度でもつくることができます。 この成果は,有機化学・錯体化学における知恵と固体材料化学との融合によって達成できたものということができます。

(3) 錯体集積化による機能材料創成
 多くの機能性材料(分子)は,高機能となればなるほど多段階反応が必要であり,エネルギーあるいはエクセルギーを大量に消費することになります。このようなエネルギー消費を必要としない高機能材料開発を目指しています。具体的には,錯体分子同士の相互作用によって2次元さらには3次元構造を形成できるように,錯体分子自体の構造を工夫しています。また,このような錯体を半導体素子の上に固定できるように工夫をしています。

現在,上に挙げた研究テーマと並行して, ESD (Education for Sustainable Development; 持続可能な開発のための教育)についての実践と教材などの収集と研究を進めています。


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