学科紹介:生命工学科 教員LETTER

2060年

生命工学科 准教授 外波 弘之 Hiroyuki TONAMI

 現在大学生あるいは高校生の皆さんは,退職するまでに何年くらい働くのでしょうか?おそらく40年〜50年くらいということになるかと思いますが,約40年後の2060年の社会は私たちの想像をはるかに超えているものになっているかもしれません.
 最近「第4次産業革命」ともよばれるAI(人工知能)の技術革新が,社会に大きな変化をもたらすかもしれないと注目されています.比較的単純な知的作業(自動車運転や事務作業など)は既にAIに取って代わられようとしています.チェスより複雑な将棋や囲碁でさえも,既にAIは人間のレベルを超えてしまいました.人間は疲れてしまったり不注意からミスをすることがありますが,AIにはそのようなことはありません(もちろんプログラム上のミスや機器の不具合はありえます).さらに,特定の分野だけではなく,人間と同程度以上の知的レベルを有し,様々な状況に臨機応変に対応する汎用AIも20年もしないうちに現れるのではないかと言われています.AIの利用により効率化が進むのは社会全体として見れば良いことなのでしょうが,AIに職を奪われる人もいることでしょう.AIの恩恵を受けた素晴らしい世界がくるのか,多くの人が失業し大恐慌のときのような世界になるのかは分かりませんが,これから人生の選択をする皆さんはどう考えていますか?
 比較的単純で多くの人がその仕組みを理解している分野はAI開発が進みやすく,創造性やひらめきが求められ仕組みが複雑な分野はAI開発が進みにくくなります.ですから科学技術の最先端分野のように前例がないものを対象にする場合,その研究の中心部分をAIが担うのは当分の間(少なくとも40年間)は難しいと考えられます.もちろん部分的には,人間の研究者にはできない計算をさせることでAIを活用すべきだと思いますが,あくまで主役は人間の研究者なのです.ですから大学でしっかり勉強をして研究開発の道へ進むことを検討してみてはいかがでしょうか.ただし,「研究が好き」とか「社会へ貢献したい」ではなく「AIに職を奪われにくそう」という動機で研究者になるというのは,不純だと思われるかもしれませんね.


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