都市デザイン工学科
コンクリート工学研究室
ひび割れが多数生じたコンクリート部材による実験
コンクリートは、橋梁・トンネルなど都市基盤を構成する様々な構造物に用いられていますが、最近の調査で、道路や鉄道の橋を支える柱において、コンクリートの材料に用いられているある種類の砂やじゃりが、雨水等の影響で膨張し、コンクリートにひび割れを発生させたり、コンクリート中の鉄筋を切ってしまうという深刻な状況が確認されました。この現象をアルカリ骨材反応と言い、「コンクリートのガン」とも呼ばれています。そこで、当研究室では、劣化を生じたコンクリート構造物を適切に維持管理するための研究を行っています。
ひび割れが多数生じたコンクリート部材による実験
主な研究テーマ
- アルカリ骨材反応が生じた鉄筋コンクリートの耐久性に関する研究
- 鉄筋コンクリートのせん断設計の合理化に関する研究
指導教員
三方 康弘
教授
(ミカタ ヤスヒロ)
専門分野
研究室がめざすSDGs
教員メッセージ
アルカリ骨材反応によって鉄筋コンクリート中の鉄筋が切れることは、人間の体に例えると、骨折した状態と言えます。骨折した場合には、身体を詳しく診察しないと治療出来ません。コンクリートの場合も同様で、劣化したコンクリートの橋を治療(補修)するためには、どの程度、痛んでいるのかなどについて知ることが重要です。そのため、コンクリートの内部に超音波を流して、外から見て確認することが出来ないコンクリート内部のひび割れの程度を調べます。また、劣化した鉄筋コンクリートがどの程度の力を支えることが出来るのかについて研究を行っています。
在学生メッセージ
私は、幼い頃、阪神淡路大震災を経験しました。それにより多くの土木構造物が甚大な被害を受け、私はその経験から土木の大切さを知りました。そこで私は、一人前の土木技術者になるために都市デザイン工学科に入り、勉学に励んでいます。現在、コンクリート研究室で「ASRと鋼材腐食による複合劣化がRCはり部材の曲げ耐荷特性に及ぼす影響」について研究しています。近年、コンクリート構造物の複合劣化の事例が報告されているものの、複合劣化による研究は未だ少ないのが現状です。したがって、ASRによるひび割れから鋼材腐食の促進が懸念されるASRと塩害の複合劣化を研究テーマに選定しました。
この研究がかなえる未来
この研究によって、アルカリ骨材反応を生じたコンクリートの橋に自動車や電車が走行しても安全であるか確認でき、さらに、劣化した橋をいつ頃、どのような治療(補修)を行えばよいかが解るようになります。現在、日本国内には15m以上の道路の橋だけでも約16万橋あります。10年後には全体の約30%の橋が造られてから50年が経ちます。私達の生活を支えているコンクリート製の橋や建物が丈夫で美しく長持ちするように、コンクリートの病気と向き合って研究しています。