
建築・都市デザイン工学専攻では、「建築学コース」と「都市デザイン工学コース」の2つのコースがあります。基本的に出身学科と同様のコースの専門領域を学びますが、学際横断的に他のコースの内容も学ぶことができます。
建築・都市デザイン工学専攻が包含する技術領域は幅広く、領域相互の関係性も深いため、本専攻では、基礎となる学部の専門性を高める「歴史・意匠」、「デザイン・計画」、「環境」、「河海・地盤」および「構造・材料」の5分野とその融合を担保する「専門横断」を設置する教育課程を編成しています。
そして、それぞれの分野の高度な知識や技術を身につけるとともに、これらの分野に関わる技術を融合的に理解し、使いこなせる幅広い視野を持った専門職業人・高度技術者の育成を目指します。
建築学コース
建築学コースでは、建築学の各分野において、幅広く、かつ、専門性の高い知識、方法論および倫理観を身に付け、建築に対する社会の要請を主体的に見出し、その解決に携わるための能力を高めていきます。
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建築学コースのポイント
01 地震時の部材応力を再現できる加力装置を活用した高度かつ正確な構造実験の実施
建築構造の部材や骨組等の定量的な構造性能評価法を確立するために、本コースでは教員と大学院生が一丸となって構造実験を行っています。 柱RC梁S接合部やRC柱、鉄骨造ブレース、鉄骨造柱脚、木造耐震壁、文化財建造物の耐震補強あるいは免震・制震装置等を対象とした様々な実験が実施され、その実験結果は国内外に論文発表されるとともに、これらの研究成果が社会に活用されています。02 地震防災を向上させるための地震時における建物全体の振動解析や免震・制振デバイス、耐震要素の詳細解析の取り組み
地震による建物被害を低減して地震後にも建物の機能を維持できるよう設計するために、地震動による建物の振動特性の解析精度を向上させています。また、免震・制振デバイスや耐震要素を対象に、構造実験を精度良く再現できるような詳細な有限要素(FEM)解析を通じて、破壊現象を把握するとともにより合理的な設計手法の提案や、より高度なモデル化手法の提案などの解析技術の向上も図っています。03 リアルな設計思想と既成概念を打ち破る発想を培う総合的設計力の開発
本コースでは、学外で行われる建築設計競技(コンペ)の積極的な参加を通じて、現代社会において形骸化した既成概念に疑問を投げかけ、未来を切り開く設計思想を養います。 また、それらの発想力の醸成とともに、リアルな設計活動のための能力の開発にも力を入れます。 基本設計図とともに、仕様書から詳細図までを作成する建築スタジオ実習や即日設計課題演習を通じて、短時間で与件を読み取り、設計案を作成できる能力を養います。04 都市・建築の環境性能を高める新時代の設計手法の提案
現在、環境面に配慮した建築が重視されています。より快適で省エネルギーな社会が実現できるように、温熱・空気・光環境に関する測定や様々なシミュレーションを活用して研究を行います。また、環境工学分野の成果を実際の設計の現場で適用するため、建築家や都市計画の専門家との共同プロジェクトを実施して問題解決に取り組むとともに、データ分析・CAD・気流解析・逆解析・AI等を駆使することで、新たな予測式や設計手法の提案をしています。05 社会性の高いプロジェクトに参画して培った技術や研究の社会的実践
机上の研究にとどまらず、社会のリアルな現場に出て研究成果の一端をリアルに設計や設計・施工してみることは、建築学を学ぶうえで大切です。 本コースでは、研究室ごとに様々なプロジェクトに参加しています。なかでも、奈良県川上村にて大規模に取り組んだ廃校小学校をリノベーションしたプロジェクトは、現在、環境教育センター川上村源流分校として、大工大の学生をはじめ他大学や他の教育機関にも利活用されています。他にも、大阪市北区・此花区・旭区・住吉区、兵庫県洲本市・尼崎市、兵庫県佐用町、京都市伏見区・西京区、大阪北商工会議所など、積極的に社会とかかわりながら研究と実践を進めています。
都市デザイン工学コース
都市デザイン工学コースでは、都市および地域とそこで営まれる人間活動を対象として、自然環境と調和し共生のできる社会基盤について、その整備や維持管理のための幅広い高度な技術と考え方を学びます。
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都市デザイン工学コースのポイント
01 社会基盤に関わる各分野の技術を融合的に理解し、それらを活用できる専門職業人・高度技術者を目指す。
都市デザイン工学で対象とする社会基盤は、都市および地域で営まれる安全・安心な暮らしや経済活動などを支えるための基盤的な施設およびシステムを指します。これらに関わる技術領域は幅広く、領域相互の関係性も深いため、本コースでは「デザイン・計画」、「構造・材料」、「河海・地盤」の分野を融合的に理解し、それぞれの分野の高度な知識や技術について学びます。 将来的には、身につけた知識や技術を活用し、自然環境と調和した安全・安心な社会を支える社会基盤を整備、維持管理できる専門職業人・高度技術者を目指します。02 積極的に企業や行政と共同研究を行うことで、各分野の専門家とのつながりをつくる。
都市デザイン工学では、実際の設計・施工・維持管理を担当する企業や都市空間を管理する行政とのネットワークを大切にします。本学は大阪市内という立地条件や、独自の教育・研究環境を活かして、学外との共同研究を積極的に行っています。企業や行政と一緒に研究やプロジェクトに取り組むことで、各専門分野の最先端を知る人たちと知り合い、都市づくりのスキルを専門家から直接学ぶことができます。人と人との“つながり”を重視する、建設業界をはじめとするものをつくる分野で、人間関係を築く貴重な機会になるはずです。03 研究の議論の場の創出と完成度を高めるためトップクラスの学会発表件数を誇る。
本コースでは、土木学会をはじめ土木・都市デザインに関連したさまざまな学会への研究論文発表を積極的に支援しています。このような講演会や技術展示会などでは、大学院生の研究が優秀賞を受賞するなど、研究の成果が学外からも評価されています。こうした学会発表の場は、自ら研究・開発した結果について研究者や現場に伝える良い機会となり、大学院生は発表を通してプレゼンテーション能力やコミュニケーション能力を向上させています。04 西日本最大規模の構造実験センターを活用し、土木構造物の挙動を深く理解する。
都市デザイン工学コースの研究では、より正確で高度な実験結果を得るために、できる限り実際に近い、大きな設備で実験することが重要です。本学には、八幡工学実験場に西日本最大規模の構造実験センターがあり、道路や橋などの載荷試験が行える試験装備をはじめ、疲労試験機など大型試験設備を研究に活用しています。こうした質の高い実験を積み重ねることで、土木構造物の挙動をさまざまな方向、新たな視点からみいだすことができます。また、企業や行政との共同研究に参加する機会もあり、社会とのつながりの中から多くを学びます。