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研究室VOICE 生成AIやメタバースから教育の可能性を広げる

情報科学部

Profile

情報科学部実世界情報学科

矢野 浩二朗教授

VR・メタバース教育研究室

●生成AIやメタバースを活用した教育の研究をされています。

 以前からiPad用の教育アプリや動画教材を作っていましたが、教育効果に限界があると感じるようになり、生成AIやメタバースを用いた教材を作るようになりました。生成AIは急速に発達し、強力な学習支援ツールとして機能するようになっています。メタバースと組み合わせることで、個々に応じた実践的な学習環境を生み出すこともできます。

●作っている教材について教えてください。

 生成AIを活用して「おしゃべり源氏物語」というアプリケーションを作りました。源氏物語は有名な文学作品ですが、詳しい内容まで知っている人はそう多くありません。そこで、古典文学の専門家である情報システム学科の横山恵理准教授と共同で、源氏物語を日常的に勉強する必要がない人でも楽しく学べる「インタラクティブポッドキャスト」を開発しました。

●「インタラクティブポッドキャスト」とは、どのようなものでしょうか?

 複数の人による対話形式の音声コンテンツを自動生成しつつ、任意のタイミングで質問や説明を求めることができるシステムです。おしゃべり源氏物語では、司会者と源氏物語の専門家という2人のAIキャラクターが登場して、トーク番組のように源氏物語について会話し、視聴者からの質問にもリアルタイムで応答します。

●どんな会話をするのですか?

まずは司会者と専門家があいさつします。
【イントロダクション】
司会役:こんにちは、おしゃべり源氏物語へようこそ! ホストの本庄です。
専門家:こんにちは、本庄さん。そしてリスナーの皆さん、初めまして。専門家の片岡です。きょうはよろしくお願いしますね。
 登場人物の「本庄」と「片岡」は、本学の創設にかかわった人名から取りました。あいさつに続いて自己紹介をしたら、「本編へのブリッジ」を挟んで「本編」に入ります。54巻ある源氏物語から1巻を取り上げ、あらすじや登場人物についてゲスト専門家が解説します(動画)
【本編へのブリッジ】
司会役:それでは今日の話題に入りましょう。最初の話題は桐壺巻です。
専門家:桐壺巻は源氏物語の最初の巻で、光源氏の誕生から始まります……(略)
【本編】
司会役:なるほど、光源氏の新しい人生のスタートなんですね。では、桐壺帝という人物についてもう少し詳しく教えていただけますか?
専門家:桐壺帝は理想的な君主とされていますが、桐壺更衣を深く愛したために宮中での軋轢(あつれき)を生んでしまいました……(略)
 会話はAIが生成するので、内容は毎回変わります。本編での会話のやりとりが5~10回続くと、AIは次に取り上げる巻を検討します。新しい話題に自然につながるよう、それまでの会話履歴や登場人物を元に、ふさわしい巻を選び、新たな「本編」へと移行します。「本編→本編へのブリッジ→本編→本編へのブリッジ→本編……」と果てしなく会話を続けます(図1)
  • (動画)生成AIが果てしなく会話を続ける「おしゃべり源氏物語」

  • (図1)「おしゃべり源氏物語」の会話フロー

●視聴者の質問にも答えてくれるのですね?

 ユーザーはチャット機能を使っていつでも質問でき、ゲスト専門家の発言が終わったタイミングで回答してもらえます。「質問の紹介→質問への回答→回答の終了」という流れで会話が続きます。
【質問への回答】
司会役:それではここで1つ、視聴者の方からご質問が届いております。紫式部とはどんな人物ですか?というご質問なんですが、片岡さん、こちらについてお話しいただけますか?
専門家:質問をいただきありがとうございます。紫式部は、平安時代の女性作家です……(略)
司会役:なるほど、紫式部は非常に教養深く、才能豊かな方だったんですね……(略)……それでは、元の話題に戻りたいと思います。

●開発で難しかったのはどのような点ですか?

 源氏物語は登場人物が多い上に、「桐壺帝」と「桐壺更衣」、「明石の君」と「明石の入道」など名前の一部が同じだったり、「頭中将」のように役職名で登場する人は出世すると肩書きが変わったりします。名前と人物情報をひもづけてAIに学習させることに手間が掛かりました。
 また、54巻をまんべんなく話題にできないことも課題です。独立した話の巻では他の巻と関連付けができないため、取り上げる機会が少なくなりました。今後は、「恋愛」や「政治」といったテーマや、「和歌」「音楽」といった文化的要素など、新たな切り口からも話題を広げられるよう改善していきます。

●メタバースで作っている教材についても教えてください。

 メタバースは「コンピューター上に多くの人々が集える空間を提供する技術」です。私はバーチャル空間に細胞の立体模型を置いたオリジナル教材を作り、担当する生命科学の授業で使っています(図2)。学生が自分のパソコンから教材ページを開くと、模型を上下や前後など、さまざまな角度から見ることができます。例えば神経細胞では、筒のような形をしていることや、筒の表面や内側に電気が流れる仕組みを学んでもらいます。模型の横に添えた解説文を読み、「細胞体」や「シナプス」などの名称をタグで貼り付けたり、電気の流れる位置を矢印で示したりする課題に取り組み、完成したらスクリーンショットを撮ってウェブで提出してもらいます。
 また、「英語による情報技術」という授業では、メタバースで博物館を作る課題に取り組んでもらっています(図3)。現実社会において、空間を使って学ぶことのできる場所が博物館です。そこで、メタバースで作るバーチャル空間でも、博物館を模すことから学びにつなげられると考えました。
 博物館を作るといっても、実際にある博物館をバーチャル化するのではありません。学生は好きなことや興味のあることをテーマにした展示をしていきます。部屋をどんな形にするか、動線をどうするか、何を展示するかなどは自由です。英語の授業なので、展示物の説明書きや館内アナウンスまで全て英語で仕上げてもらいます。翻訳には生成AIを利用しても構いませんが、頼り切らずに表現をブラッシュアップしてもらいます。バスケットボールのアニメが好きな子が作った展示では、作品解説や名場面、媒体の種類などを順番に説明し、本人の熱い思いが伝わってきました。世界でたった一つの自分だけの博物館ができるので、この授業を受けた学生の満足度は高いですね。

  • (図2)生命科学の授業で使う教材の一例。図は神経細胞
  • (図3)「英語による情報技術」で作るメタバースの博物館。画像は入り口部分で、奥に学生たちの展示室が続く

●メタバースを活用した教育の普及に向けて、学外でも活動されています。

 バーチャルリアリティー(VR)やメタバースを現実社会で実装できるよう、Facebookグループ「教師のためのⅤR活用術」を作っています。メンバーは約3,000人とVR教育関連では日本最大級です。
https://www.facebook.com/groups/vrsensei/?locale=ja_JP
 成果をオープンにする理由は、研究とは本来、社会に役立ててこそだと思うからです。私の研究が参考になり、広く教育現場が良くなることにつながればと願っています。