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研究室VOICE テニス初心者のサーブの動きを生成AIで補正

ロボティクス&デザイン工学部

Profile

ロボティクス&デザイン工学部システムデザイン工学科

瀨尾 昌孝准教授

知能情報処理研究室

●瀨尾先生の研究室では、生成AIを利用してテニス初心者のサーブの動きを補正する手法を開発されたそうですね。

 勘や経験に頼らないトレーニングサポートに役立てられないかと考えたのが始まりです。初心者はラケットを振る時に腕が上がりきらず、下半身は地面にべったりと張り付いています。一方、経験者は体のばねを使ってジャンプして、ばねを生かしてなるべく高い位置でボールを捉えることで強い球を打っています。
 初心者の動きからその人特有の癖や身体構造に基づく特徴を抽出し、その特徴を保持したまま経験者の動きとして再生成することで、どのような動きに変えるとよいかを提案できると考えました。再生成するために使ったのが「ドメインアダプテーション」です。ドメインは分類やカテゴリーを指します。アダプテーションは適用という意味です。初心者と経験者という二つのカテゴリーについて、初心者のドメインを経験者のドメインのように作り直すという研究です。(動画1)

  • (動画1)初心者の動きからその人特有の癖や身体構造に基づく特徴を抽出し、その特徴を保持したまま経験者の動きとして再生成する研究に取り組んだ

●何だか難しそうです。

 ドメインアダプテーションは機械学習では以前から使われていますが、私たちの研究室では最先端のディープラーニングを基盤とした技術を利用しました。生成AIはデータを「特徴量」と呼ばれるものに変換して、その後、特徴量に基づいて求めるものに変換します。身近な例で説明するならプリントシール機の顔加工技術です。撮影した自分の顔を「もっと可愛くしたい」「美人風にしたい」と加工することがありますね。生成AIは、元の顔の特徴を数値化した後、可愛くしたり美人にしたりする数値に変換しているのです。

●知らないうちに、そんな高度な技術が使われていたのですね。

 今回の研究では、テニススクールの協力を得ました。初心者と経験者がサーブするところをカメラで撮影して、ひざやひじなど17個の関節を座標点として三次元データに復元し、一人一人の動きの特徴を抽出しました(動画2)
 サーブの動きは時系列性を含む複雑なデータになるので、一般的には抽出された特徴に一貫性を持たせることは困難です。人工知能の分野では、高次元のデータの特徴を抽象的に表現する「潜在空間」というものがあります。サーブの動きについて、潜在空間で表したのが(図1)です。従来の方法で抽出したものが左図で、私たちの研究室で工夫して抽出したものが右図になります。
 点は赤や青、オレンジなど、人ごとに色分けしています。左図は円のように集中してさまざまな色が入り交じっていますが、右図では全体的に右肩下がりの線状に分布しています。この点の一つ一つは、ラケットを振り上げたところから振り下ろしたところまでの動きが入っているのですが、右図になったことで動きに応じた推移も把握できるようになりました。

  • (動画2)サーブするところをカメラで撮影して、ひざやひじなど17個の関節を座標点として三次元データに復元した

  • (図1)サーブの動きのデータの特徴を抽象的に表現した「潜在空間」。従来の方法で抽出したものが左図でさまざまな色が混在している。私たちの研究室で抽出したものが右図でそれぞれの色が右肩下がりに分布し、動きに応じた推移が分かる。

●研究ではどんなところが難しかったのでしょうか?

 テニスのサーブの動きなので、ラケットを振り上げている時の動き、ボールを捉えた時の動き、打ち終わってボールが離れた時の動き、とそれぞれの位置の動きについて初心者と経験者のデータを一致させなければなりません。また、体の大きさで骨格も異なるので、その点も考慮して、人工知能に事前学習させる必要がありました。
 そういった工夫を重ねた結果、自然な動きに再生成することができるようになりました。

●今回の研究は他のスポーツにも応用できるのでしょうか?

 以前、他の大学にいた時に研究していたものですが、野球のピッチャーのフォームを調子のいい時と悪い時とで分析したことがあります。団体種目や相手のある種目は複雑な動きが多いので難しいと思いますが、個人種目で位置が固定されているアーチェリーなどには向くと思います。スポーツ分野では近年、戦略を立てたり審判のトレーニングに役立てたりするためのAI活用が増えているので、今回の研究もさまざまな応用につながると考えています。

●先生のご研究の面白さはどんなところにありますか?

 人工知能の研究は半年ごとにブレークスルーが起きるほど技術革新が激しいです。教員は毎年の卒業研究で最先端の研究を指導することができるので、とてもやりがいを感じています。学生は即戦力としてさまざまな企業から求められ、まさに「引く手あまた」です。以前なら人工知能の勉強をしても人工知能とは関係のない部署へ配属されることがありましたが、最近の企業はAI人材を求める傾向が強く、研究者として活躍する卒業生が増えています。トップ企業で社会の話題になっている製品作りに教え子が携わっているケースも珍しくなく、誇らしく感じています。