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研究室VOICE 再エネが生きる電気の供給システムを考える

工学部

Profile

工学部電気電子システム工学科

又吉 秀仁講師

パワーコントロール研究室

●又吉先生の研究室の名称は「パワーコントロール研究室」です。パワーコントロールとは、どのような意味ですか?

 電力の需給バランスを制御する技術や仕組みのことです。
 電力は大量に貯蔵することが難しいので、発電(供給)と消費(需要)を「同時同量」とする必要があります(図1)。発電と消費のバランスが崩れると周波数が乱れ、更に不平衡(アンバランス)が大きくなると停電につながることもあります。電力会社では、消費が少ないときには発電を抑えて全体のバランスを保っています。
 私の研究室はパワーコントロールの中でも、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)をうまく活用する仕組みづくりに挑戦しています。
 再エネは枯渇せず、二酸化炭素を排出しないので地球温暖化を防ぐことができます。小規模な発電施設を作ることは災害対策につながり、原子力発電のような危険性もありません。しかし、天候などに左右されて発電が不安定だという課題があります。
  • (図1)電力の需給バランスが崩れると、大停電の可能性も

●研究室ではどのようなことに取り組んでいますか?

 再エネのみで持続運転が可能な「小さな電力系統(マイクログリッド)」の実証実験をしました。マイクログリッドとは、従来の電力系統から独立して、特定のエリア内で自給自足できる小規模な電力ネットワークのことです。私たちの研究室では、太陽電池1台でパソコン1台を安定的に動かすことのできる直流給電システムを開発しました(図2、写真1)
 直流給電システムの基板は、電子設計自動化ソフトウエア「KiCad(キキャド)」を使って設計しています。部品はパソコンを使ったシミュレーションで選定し、回路に使うマイコンのプログラミングもしました。電圧は24Vを基準とし、通信システムなしで自動的に発電と消費のバランスをとることを目標にしました。しかし、当初は回路の誤動作や故障に苦しみました。回路設計や部品選定に問題があり、コイルが磁気飽和してしまうことが一番の課題でした。回路配線の位置の調整や適切な部品の選定により、最終的には通信不要の協調制御を実現できました(図3)
  • (図2)再エネのみで持続運転できる小規模な電気の供給網の実証実験をした。水色の四角の「DC/DC」は直流給電システム。
  • (写真1)蓄電池1台、パソコン(負荷)1台、太陽電池(PV)1台を使い検証
  • (図3)青い線は給電電圧、オレンジの線は太陽光発電の出力電力。直流給電システムが働き、発電が増えると電圧が下がり、発電が減ると電圧が上がっている。給電電圧と出力電力をおおむね連動させることができた。

●なぜ、パワーコントロールについて研究しているのですか?

 高校生の頃、将来は電力会社に就職したいと考えていました。大学の工学部に進学して、回路や半導体、制御などを学び、それらの理論がつながって電気を便利に使える社会ができていると分かり、パワーコントロールに興味がわきました。大学や大学院では研究の厳しさに悩んだ時期もありましたが、乗り越えるとやりがいを感じて研究者の道に進みました。2020年に本学に着任してからは、理論に裏付けられた実践に学生と挑戦する毎日で、私自身がわくわくしながら研究を進めています(写真2、3)
  • (写真2)学生が作る電力変換器の基板を確認する又吉講師(左)
  • (写真3)研究に使う機器は日ごろのメンテナンスが欠かせない

●今後、取り組みたいことを教えてください。

 マイクログリッドの実証実験では、「シンプルな制御システムで自動的に発電と消費のバランスをとる」という第一段階の目標を達成しました。今後は、太陽電池や蓄電池の台数を増やした実験に取り組みます。また、風力発電の研究にも着手しています。風車は、風速の変化が大きい状況下では回転速度を制御することが難しく、場合によっては出力電力を大きく減少させてしまいます。機械学習を活用した制御手法を開発したいと思っています。
 「マイクログリッド」「太陽光発電」「風力発電」、これらに加えて「デマンドレスポンス」という電力需要を調整する仕組みも考えていきます。魚の養殖場のポンプや植物工場の照明など、電力がひっ迫した時に消費電力を抑えることが可能な施設や装置の開発から、不安定な再エネ発電の安定に役立たせるのです。
 かつては、電力会社の発電所で発電した電気は、送電所や変電所を経由して消費者の元まで届き、その流れは川のように一方向でした。しかし、電力自由化などを経て、再エネなどさまざまな場所での発電がされるようになった現在では、発電と消費をつなぐ供給網は複雑になり、通信ネットワークやIT技術を活用して、供給の最適化を図る「スマートグリッド」への関心が高くなっています。
 仕組み作りの一つとして、中央制御装置で情報を統合して個々の出力を決める「集中制御(グローバル制御)」という考え方があります。これに対して、私たちの研究室では「非集中制御(ローカル制御)」という、給電電圧を指標として需給バランスを推定し、個々の発電施設が出力を決定するシステムづくりを目指しています。通信を必要としないためコストを抑えられることや、素早く反応できるメリットがあるからです。これらの研究を通じて、再エネ電源を主力電源に用いる道筋を示し、脱炭素化やエネルギー自給率の改善に貢献したいと考えています。
  • 又吉講師(左端)と研究室の学生ら