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研究室VOICE 自然界に存在する稀少な成分を合成する

工学部

Profile

工学部応用化学科

小林 正治准教授

天然物化学研究室

生活の知恵と健康食品

昔から人々は様々なものを食べ、その効能を実感してきました。「○○ちゃん、ニンジンは目に良いから残さずに食べなさい。」とか、「風邪をひいて喉が痛いときに、大根を浸けたハチミツを飲んだら症状が和らいだ。」とか、誰しも一度はこのような「生活の知恵」に助けられたことがあるはず。もちろんこれらの「生活の知恵」には、科学的な根拠が隠されているわけですが、実は科学的に解明されている「生活の知恵」は全体から見ればほんの一握りであり、多くの現象は、食品のどのような成分のどのような作用によってもたらされているのか完全には明らかにされていません。昨今の「健康ブーム」もあり、現在では多くの健康食品(機能性食品)が世の中を出回っていますが、その中には科学的裏付けが乏しい食品(すなわち「怪しい」食品)も少なくはなく、「○○に効く!」という誇大広告に踊らされることもしばしばあります。

食品の機能を分子レベルで解明する

食品の機能を決定づけるのは、言うまでもなく食品に含まれている成分(分子)ですが、実はその成分の化学構造や作用を明らかにすることは簡単ではありません。例えば緑茶に含まれるカテキンにしても、品種、生育環境、収穫時期などによって含まれるカテキンの化学構造や割合が異なり、それに応じて緑茶そのものの効能も当然変わってきます。カテキンのように比較的多く含まれる成分であれば成分解析は可能かもしれませんが、天然の食品(野菜、果物、キノコ、海藻、薬用植物など)には極微量しか含まれていない成分もあり、雑多な成分の中から目的成分のみを取り出して化学構造や作用を解明するのは一般的には極めて大変な作業です。しかし、食品の機能を正しく理解するためには、個別の成分に対して正確な評価を下した上で、全体の機能を考えなければなりません。

自然界に存在する稀少な分子を人工的に作り出す「天然物合成化学」

では、このような微量成分をどのようにして解析すればよいのでしょうか。その解決法の一つが「合成」です。専門的には「天然物の全合成」と言われますが、市販の試薬から様々な化学反応を使って、何工程もかけて天然成分と同じ成分を作り、その合成サンプルを用いて様々な解析を行うのです。もちろん合成は一筋縄ではいきませんが、この方法の良いところは、目的の成分のみをピンポイントで供給でき、さらに、その成分の化学構造を人工的に作り変えて、天然成分よりも優れた機能を持つ分子を創製できることにあります。その他にも、合成することによって天然成分の真の化学構造が初めて明らかになることも少なくありません。

「天然物合成化学」が切り開く未来

上記以外にも「天然物合成」の意義はあります。その一つが医薬や農薬への応用です。医薬や農薬の有効成分の中には、天然成分の化学構造を参考にして作られたものが数多くあり、合成サンプルそのものが「医薬や農薬の種」となる場合や、その合成過程で見つけた「化学反応」や「分子構築手法」が医農薬の合成に応用されることもあります。また、最近では「天然物合成」を「分子生物学」と組み合わせた「ケミカルバイオロジー」という分野が急速に発展し、食品成分やその他の天然分子が私たちの体内でどのような因子に働きかけ、どのような仕組みで機能を発揮するのか、合成分子を用いて解き明かそうという試みがなされています。このような魅力ある「天然物合成化学」に皆さんもチャレンジしてみませんか?
  • 認知症予防に効果があると言われるヤマブシタケ
  • 合成したサンプル
  • 低温合成実験の様子