大学の年次が進むと次第に授業は専門的になっていきます。担当科目は、なるべく先生個人の研究分野と近くなるように決められていますが、ぴったり一致するとは限りません。ですから、先生も授業を進めるために勉強しなければなりません(教室で喋っている内容よりはかなり深く、ということは申し添えますが)。普段,電気・電子回路を扱っている私にとっては、エネルギー関連の授業科目がそれにあたり、特に熱力学に関連する部分は個人的・趣味的にも興味を持っています。熱力学とは、冷暖房やエンジン、火力発電や原子力発電を考える上で重要で、大手電力会社をはじめとしてエネルギー関連企業に就職したい人には必須の学問となっています。今回は、高校生の生徒さんに向けて、私の勉強体験を少し話します。
「エネルギー保存の法則」をご存知でしょうか?位置エネルギー、電気エネルギー、熱エネルギーなど、エネルギーは様々な形態を取りながらも、総量は一定というものです。例えば、負荷の高いゲームをプレイしたときPCやスマホが熱くなるのは、電気エネルギーが熱エネルギーに変化したことを意味します。この熱エネルギーの量は、最初に入力した電気エネルギーとほとんど同じなのです。しかし、この理屈を推し進めると妙なことになります。人類の使用するエネルギーのほとんどは最終的に熱となり、大気や海洋や宇宙空間に捨てられていますが、それらの熱を集めてもう一度使えば、良くないでしょうか?つまり、人類にエネルギー問題は存在しないのではないか?エネルギーをぐるぐる回していれば良いのだから。
それは無理、と言うのが「熱力学の第二法則」というものです。「熱は低温物体から高温物体にひとりでには流れない」という法則です。なぜ、これが上記の妙な結論を否定するのか、についてはここでは触れません。
お湯と冷たい水が接すれば、熱がお湯から冷たい水に移動し、やがて両者の温度は等しくなる、というのは分かりやすい例ですが、太陽光をレンズで集めても太陽の表面温度以上の高温を得ることも同じく禁止されます。しかし、太陽光の例は疑わしいと思いませんか?小さい小さい点に光を集めればいくらでも温度が上がるのではないか・・・確かに、口径の1/2より小さい焦点距離を持つレンズや凹面鏡なら、太陽表面以上の集光ができるような結論になります。これは中学生でもできる素朴な考察です。
そこで少しだけ詳しく、光線を扱う「光学」を勉強してみました。熱力学第二法則に抵触しそうな部分はどうなっているのか?その結果、Abbeの正弦定理というものに行き当たりました。これによると、上記のような小さな太陽の「像」は不可能なのです。
この定理は熱力学とは独立したものなので、まさに神がかっている!と思ったものです。ここにはもう一段深い原理があるのですが、そこのところはよく分かりませんでした。ただ、魅惑的な世界が広がっていることは分かりました。物理を修められた先生に読まれると恥ずかしいような内容ですが、にも関わらず投稿したのは、大学の先生も勉強に対して現役だよと言いたいがためです。
 
			



 
											