緑色や黄色の雪?

残雪期の山を歩いていると、表面が緑色や黄色、赤色などに色付いた残雪をみかけることがあります (写真1)。そのような残雪は主に、色の付いた微生物が残雪内で高密度に繁殖することで引き起こされます。
雪や氷にすむ微細藻類

残雪に色を付ける微生物は単細胞性藻類のなかまです (写真2)。からだの色の違いは、光合成色素組成の違いを反映しています。それらは氷雪藻類や雪氷藻類などと呼ばれ、融雪期に残雪中で光合成を行い、盛んに増殖します。
氷雪藻類の多くは寒冷環境でしか生存できないため、雪がなくなる前に耐久胞子をつくり、次の降雪と雪解けまで休眠していると考えられています。
氷雪藻類の多くは寒冷環境でしか生存できないため、雪がなくなる前に耐久胞子をつくり、次の降雪と雪解けまで休眠していると考えられています。
氷雪藻類が生態系をつくる
雪氷環境は寒冷で栄養に乏しいため、生物の生存が難しい極限環境のひとつとされています。しかしながら、氷雪藻類が残雪中で光合成を行って繁殖すると、やがて氷雪藻類を食べる微生物や微小動物、それらの排泄物や死骸などを分解するバクテリアや菌類などが集まってきて、氷雪藻類を始点とする食物連鎖 (雪氷生態系) が形成されます。
雪氷生態系を構成する微生物は雪氷中でも生命活動を維持できるため、それらがもつ酵素などはバイオテクノロジーに応用できる可能性があります。
雪氷生態系を構成する微生物は雪氷中でも生命活動を維持できるため、それらがもつ酵素などはバイオテクノロジーに応用できる可能性があります。
未知の氷雪藻類を探す

氷雪藻類の研究の歴史は古く、進化論を提唱したことで知られるダーウィンの著書「ビーグル号航海記」にも、氷雪藻類によって赤く色付いた雪をアンデス山脈でみたことが記されています。 微生物は環境が似ていれば、地球上のどこであっても似たような種が生息していると思われがちですが、世界各地のサンプルを用いた研究の結果、氷雪藻類の種の多くは地域性が強く、研究がまだ行われていない氷雪藻類も多数いることが強く示唆されました。
私はこれまでに新種として7種の氷雪藻類を報告しましたが、まだ足りません。これからも日本を中心に雪氷サンプルを採集し、未知の氷雪藻類の実体を明らかにしていきたいと思います (写真3)。
私はこれまでに新種として7種の氷雪藻類を報告しましたが、まだ足りません。これからも日本を中心に雪氷サンプルを採集し、未知の氷雪藻類の実体を明らかにしていきたいと思います (写真3)。