「今」を問い直す
私の専門分野は、近代日本政治史です。これまで、特定の政治家に焦点を当て、その人物がどのような政治構想を持ち、どのように行動したかを史料から明らかにする研究をしてきました。政治家同士がやり取りをした手紙、日記、新聞といった史料を読むことで、当時を生きた人々の姿が立ち上がるように感じられる瞬間があります。
歴史学の魅力は、過去を知識として蓄積するだけでなく、「その時代に確かに人が生きていた」ことを実感できる点にあると私は考えています。
歴史学にふれる

大阪工業大学では、1年次に「世界と人間」という入門科目を開講しています。ここでは、史料をどう読み、何を事実とするかという歴史学の基本を学ぶと同時に、公的な記録に残らない人びとの暮らしや、世界のつながりに関する多様な歴史研究の成果を通して、歴史学の奥深さと広がりを感じてほしいと思っています。
2年次以降の「歴史学」では、より本格的に社会や制度の背景を読み解く視点を身につけていきます。歴史を「なぜそうなったのか」と問い直す力を育てることが大きな目標です。
さらに3年次以降では、政治家の日記や新聞といった史料を実際に読み、当時の社会や人びとの思いを再構成するような演習にも取り組みます。史料を通じて過去と向き合う体験から、歴史的事実を正確に読み取り、解釈するおもしろさを感じてほしいと考えています。
キャンパスの風景にも歴史がある

歴史は遠い昔の話ではなく、身の回りにも存在します。たとえば、工学部生・知的財産学部生が学ぶ大宮キャンパスは、現在、淀川の左岸にあります。これは、明治時代の大規模な河川改修工事によって淀川が付け替えられたからです。それ以前、ここは右岸にありました。都市のかたちもまた、歴史の産物です。
歴史を知ることで、世界の見え方が変わります。今をかたちづくる価値観やしくみ、人びとの営みは、過去とつながっています。そのような発見を、ぜひ一緒に体験してみませんか。
-
-
淀川を題材に、次世代の持続可能な社会の実現を担う人材を育成する本学独自の「淀川学」。その成果の一部は、2025年大阪・関西万博「TEAM EXPO」で紹介され、社会への発信につながりました。