技術の核は「微細加工」と「流体力学」
「機械工学」の技術は、自動車のような大きな機械だけでなく、目に見えないほど小さな世界でも未来を切り拓く力を持っています。当研究室では、機械工学の知識を核に、マイクロ流体技術を環境・エネルギーや医療・バイオといった最先端分野へ応用する研究に取り組んでいます。
流体を「支配」する、マイクロ世界の理
通常、流体はカタチがなく捉えどころのない存在ですが、髪の毛ほど細い流路(マイクロ流路)に閉じ込めることで、その振る舞いを完全に支配できます。ミクロの世界では、液体の「勢い」より「粘り気」が勝るため、流れが混じり合わない整然とした「層流」が生まれます。この流れは完璧に予測できるため、私たちは流体を自在に操り、世界にないデバイスを創造できるのです。この「支配」の条件を創り出す「微細加工」技術と、流れを熟知し設計する「流体力学」が、私たちの強みです。
-
Fig. 1: マイクロ流路を加工するための工具。歯の直径は髪の毛よりも細い。 -
Fig. 2: 工具を使って作製したマイクロ流路
応用先は、地球環境からいのちまで
【マイクロ流路を量産する基盤技術】🔧
私たちは、世界で初めて高分子樹脂用の精密拡散接合装置を開発しました。この「拡散接合技術」は、樹脂などの材料を原子レベルで接合し、複雑なマイクロ流路を持つデバイスを創り出すための基盤技術です。これにより、接着剤などを使わずに流路を完全に密閉でき、環境・医療分野における最先端デバイスの開発を可能にしています。
-
Fig. 3: 世界初の高分子樹脂用の精密拡散接合装置
【環境・エネルギー分野への応用】🌍
この微細加工技術を応用し、地球環境問題の解決に貢献します。例えば、昆虫や植物の体表面構造に学ぶ「バイオミメティクス」により、水の抵抗を極限まで減らす超撥水性表面を開発。この技術は、船舶の燃費を大幅に改善する可能性を秘めています。また、静電気の力で大気中のPM2.5といった微粒子を効率的に回収する新しいデバイスの開発も進めています。
-
Fig. 4: 蝶の翅の三次元観察画像。鱗粉がその名の通り鱗状になっていることが分かります。 -
Fig. 5: 蓮の葉の表面構造を模擬して作製した超撥水性表面。
【医療・バイオ分野への応用】🧬
マイクロ流体デバイスは、人の「いのち」に貢献する研究にも応用されています。私たちの精密な加工技術を駆使して、細胞から「人工筋肉」を創り出す研究や、腎臓の機能を代替する医療デバイスの開発など、未来の医療を支える挑戦を続けています。
-
Fig. 6: 「人工筋肉」を培養し「人工筋肉」が発揮する力を測定するプラットフォーム。 -
Fig. 7: 「人工筋肉」をストレッチしながら培養する装置。



