
「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか。」
最初から長いセリフを引用しましたが、こちらは私の大好きな小説『西の魔女が死んだ』の登場人物であるおばあちゃんが、周りになじめず不登校になってしまった孫娘にかけた言葉です。皆さん、この言葉を聞いてどう思いますか?楽に生きられる場所を求めるのは、「逃げ」なんじゃないか?と思った人も、もしかするといるかもしれませんね。逆に、この言葉を聞いて納得したりホッとした人もいるのではないでしょうか。
楽に生きることと、怠けて生きることとは違います。水の中に置かれたサボテンやハワイに置かれたシロクマが、その環境で生きられないのは当然のことです。場所選びを間違えたな、と気づいたら、自分にあった環境を探そうと行動に移すことも、時には大切なことです。
『西の魔女が死んだ』の中でおばあちゃんは、これ以外にも人生の指標となるような様々な言葉を孫娘に投げかけ、その言葉は孫娘がたくましく生きるための知恵となってゆきます。今のあなたに刺さる言葉に出会えるかもしれないこの小説。秋の夜長に楽しんでみませんか。
【文献】梨木香歩著(2001)『西の魔女が死んだ』新潮社