
漫画「チ。-地球の運動について-」を読みました。15世紀のヨーロッパを舞台に、その当時は異端とされていた地動説に命がけで迫ろうとした人々を描いた作品です。とても面白く、様々なことを考えるきっかけになりましたし、印象に残るセリフがたくさんありました。中でも、文字を扱える人がまだ限られていたその時代に、天文学の研究者を志す一人の少女が口にした次のセリフにハッとしました。
「文字は、まるで奇蹟ですよ。(中略)文字になった思考はこの世に残って、ずっと未来の誰かを動かすことだってある。そんなの…まるで、奇蹟じゃないですか。」
少女の言う通り、作品の中では、地動説の研究に関する文書が多くの人の死を超えて受け継がれていきます。
今の日本では読み書きできる人が大多数であり、SNSの発展もあって、日々大量の文字が生み出され消費されています。その中では他者を誹謗中傷するような出来事も頻繁に起きています。しかし本当は、文字とは時空を超えて人と人とを繋ぐことのできる奇蹟に満ちたものなのだということを、改めてこのセリフに教えてもらいました。
大学生活の中ではレポートや論文など、自分の考えを文字にして綴る機会も多いと思います。また、ふと出会った言葉や書籍によって、人生が変わるような体験をすることもあるでしょう。文字を生み出す責任も、文字によって与えられる恵みもどちらも大切に、その奇蹟を忘れないようにしたいものです。
〔出典〕魚豊『チ。-地球の運動について- 第3集』 小学館 2021年 p.175-177
学生相談室カウンセラー 重田 智