エージェントベースシミュレーション(ABS)は、災害時の避難計画や安全性の評価に広く用いられています。しかし、従来は少数回の試行結果から平均値や中央値のみを示すことが多く、実務上とくに重要な、深刻な避難失敗がどの程度の確率で生じるのかを把握することは容易ではありませんでした。
そこで本研究では、地震による道路閉塞の不確実性を考慮した津波避難ABSを対象に、3,559回のモンテカルロシミュレーションを実施し、100分以内に避難できなかった人数の分布を分析しました。その結果、避難できなかった人数には大きなばらつきが見られ、分布には二峰性も示唆されました。さらに、住民の大部分が避難できないような深刻な事態に相当する閾値を設定すると、その閾値を超える確率は12.45%でした。これらの結果は、避難政策や避難計画を比較・評価する際には、平均値や中央値だけでなく、高分位点や閾値超過確率といった尾部リスク指標もあわせて用いる必要があることを示しています。
発表後の質疑応答では、行政施策の反映方法や計算負荷を抑える工夫などについて活発な議論が行われ、今後の研究の発展に向けて有益な機会となりました。
本研究は、株式会社構造計画研究所との共同研究として実施されたものです。
ルイス・フィリップス・ヘリヤント・ゴサリ, 玉田 正樹, 坂平 文博, “避難計画評価のための尾部リスク指標—津波避難シミュレーションのモンテカルロ試行による高リスク事象の定量化,” 人工知知能学会第二種研究資料 ビジネス・インフォマティクス研究会, SIG-BI 028-03, 2026



