大阪工業大学

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ニュース ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ2025 初出場で完走の快挙

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世界最高峰の舞台に挑戦

大阪工業大学ソーラーカープロジェクトチームは、2025年8月18日から31日にかけてオーストラリアで開催された「ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ(BWSC)」に初めて出場しました。北部の都市ダーウィンからアデレードまで約3,000kmを縦断するこの大会は、世界の大学・研究機関・企業が最新技術と情熱を注ぐ、ソーラーカーレースの最高峰です。

本学チームは初参戦ながらも、世界中から集まった名門チームと熱いレースを展開し、そして最終的に初出場にして完走という快挙を成し遂げました。

[8月21日~22日・審査(車検)]— 車検突破への執念

静的審査の様子
現地に到着後、まず立ちはだかったのは厳格な車検審査。機械や電気、バッテリーなど9分野があり、この審査を通過しなければ予選以降に進めません。初回は4分野のみ通過。通過できなかった5分野はレギュレーションの解釈違いであったため、海外での大会であることを改めて思い知らされました。指摘を受けた5分野を通過するため、メンバーらはすぐに必要な部品や機材を調達。修正作業に取り掛かりました。夜を徹して改良を重ねた結果、2回目の審査で全項目をクリア。チームは静的・動的審査を突破し、いよいよスタートラインに立つ権利を手にしました。

  • 審査を通過したメンバーら

[8月23日・予選]— 仲間の言葉で立ち直る

予選タイムアタックでは健闘の末、全体22位。同クラス27チーム中17位という結果を収め、初出場としては十分な結果を出しました。しかしその裏で、マシントラブルによる車体損傷が起こり、チーム内に不満や不安が募る場面もありました。そんな時、チームリーダーの宮大岳さん(電気電子・機械工学専攻 博士前期課程2年)が「目標は3,000km完走。不満を口にしても、チームは何も前進しない。今はやるべきことをやれ」という言葉がチームを立ち直らせました。困難を乗り越える原動力は、仲間の絆と冷静な判断力でした。

  • サーキットがあるHidden Valley で円陣を組むメンバーら
  • 会場に世界中から集った出場チーム

レース本番 — 3000kmのサバイバルへ

[8月24日・レーススタート]— 波乱の幕開け、チームワークで乗り切る

7時にはスタートラインであるダーウィンのFestival Lawnに到着しマシンのセッティングを開始しました。しかし、電源が入らないアクシデントが発生。前日の夜に行ったチェックでは問題なかったことからチームメンバーは改めて原因特定のための再チェックを実施しました。その結果、問題はバッテリーに繋いているパーツの作動不良であることを突き止め、現場にて緊急の修復を行い、何とか出走できる状態にしました。予定していた出走時間から遅れてのスタートになり、タイムロスを余儀なくされましたが、ここでもチームワークで困難を乗り越えることができました。
  • ダーウィンを出発し、熱帯地域を走る本学のソーラーカー
  • 宿泊地・ラリーマで太陽にソーラーパネルを向けながら点検
  • 満天の星空の下、テントを張り、一夜を過ごす
ポールポジション:22 走行距離:495.7km 走行時間:8:40~17:00 巡航速度:75km/h 
コントロールストップ(※1):キャサリン 宿泊地:ラリーマ
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※1 オフィシャルが指定する場所に設置されており、30分間の停車が義務付けられているチェックポイント

[8月25日・レース2日目]— バッテリーを味方に、走行距離549kmを達成

コントロールストップに到着し、こぶしを突き合わせるメンバーら
大会2日目となるこの日、チームは夜明けとともに活動を開始しました。6時15分、厳重に保管されていたバッテリーが大会オフィシャルスタッフにより開封(※2)されると、メンバーらは朝日を浴びながらソーラーパネルを太陽の方向へ傾け、充電作業を開始(※3)。エネルギーを蓄えたマシンは、午前8時の号砲とともに力強く車道へと走り出しました。前日のレースでは一部のパーツが加熱による動作不良を起こし、十分なバッテリー残量を確保できないまま終えるという課題がありました。しかし、この日はファーストドライバー宮さんを皮切りに、保積昂明さん(機械工学科3年)、齋藤陽人さん(同)、三林優作さん(同2年)が次々とドライバーを務め、太陽光を最大限に生かした効率的な走行を徹底。その結果、前日を上回る549kmを走破し、完走条件である「1日500km」をしっかりとクリアしました。
マシンの大きなトラブルはなく、メンバーらも連日の寝不足ながら高い集中力を維持。南に向かうにつれ、天候や自然との戦いが予想されますが、チームは気を引き締めつつも前向きに挑戦を続けました。

※2 バッテリーは太陽が沈むと金属製のケースに厳封され、チームに同行しているオフィシャルスタッフのみがその鍵を管理します。翌日の日の出前に開封され、ソーラーカーに搭載します。これはバッテリーが厳密に太陽光のエネルギーのみで充電される必要があるための処置です。
※3 走行可能時間は8:00~17:00と決められています。そのため、日の出から8:00まで、17:00から日の入りまでの時間での充電が非常に重要になります。

  • 南下するにつれて、より鮮明になる星空
暫定順位:16 走行距離:550.8km 総走行距離:1046.5km 走行時間:8:00~17:10 巡航速度:80km/h
コントロールストップ:ダンマラ、テナントクリーク 宿泊地:ディルベリーズ・フリーステイ・キャンピング
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[8月26日・レース3日目]— 561kmを走破、折り返し地点を通過

日の出位置に合わせてソーラーパネルを太陽に向ける
この日も早朝からバッテリー充電を行い、順調にスタートしました。レース3日目にあたるこの日は、大きなトラブルもなく走行を重ねることができ、最終的に561kmを走破。これまでで最長の距離を記録し、確実に完走への歩みを進めました。

中間地点のアリススプリングスで停車する本学のソーラーカー
キャンプ地はオーストラリア中央部の都市アリススプリングスを越えた地点。ここから先は強い風や曇天が予想され、走行条件はより厳しくなります。一方で、下り勾配の多いルートもあり、今まで以上に緻密なエネルギーマネジメントが求められます。
すでにリタイアするチームや、制限時間内にコントロールストップを通過できないチームが出始める中、本学チームは小さなミスはあるものの安定した走行を実現。メンバーらは怪我や体調不良もなく、見つけたトラブルやミスに迅速に対処しながら、ただひたすらに前へ進みます。
ソーラーカープロジェクトを牽引している伊與田宗慶准教授(機械工学科)は「保護者の皆さんに、この生き生きと挑戦する姿を見せてあげたい。教育の場に携わる者として、現地で学生の成長を間近に見守ることができる喜びはひとしおです」と、満点の星空の下でその思いを噛みしめました。

  • 予測できないトラブルや自給自足の野営が続く中、元気な姿を見せるメンバーら
暫定順位:16 走行距離:562.1km 総走行距離:1607.8km 走行時間:8:09~16:58 巡航速度:80km/h
コントロールストップ:バロウクリーク、アリススプリングス 宿泊地:アリススプリングスから南に114キロ地点
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[8月27日・レース4日目]— 571kmを走破、累計2,178kmに到達

ノーザンテリトリー州と南オーストラリア州の境界を通過
大会4日目となるこの日も、チームは早朝から順調にスタートしました。エネルギーマネジメントを担当する中辻真人さん(電気電子・機械工学専攻 博士前期課程1年)の的確な判断と指示(※3)のもと、走行距離を着実に伸ばし、最終的には571kmを記録。累計走行距離は2,178kmに達し、ゴールに向けて大きな前進を遂げました。
アリススプリングスを越えて以降は風が強く、曇天がかかりやすい厳しい地域に突入しましたが、この日は幸運にも快晴に恵まれ、序盤は穏やかな風の中で快適に走行。夕方には風が強まりましたが、大きな影響を受けることなく一日を走り切りました。

※3 ドライバーが車内にある情報端末から車速、消費電力量、発電量などをサポートカーに同乗しているエネルギーマネジメント担当者に伝達し、風速・風向や道路の勾配、路面状況、カーブの多さ、対向車の量から最適な車速を割り出し、ドライバーに逐次伝達します。

  • 名もなき野営地にて
暫定順位:14 走行距離:570.56km 総走行距離:2178.2km 走行時間:8:00~17:00 巡航速度:75km/h
コントロールストップ:エルデュンダ、クーバーペディ 宿泊地:クーバーペディ
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[8月28日・レース5日目]— 荒天への備え、ゴール前夜の緊張

猛烈な横風を発生させるロードトレイン
前日、チームはコントロールストップ地点であるクーバーペディでレースを終えました。4日ぶりに宿泊施設で夜を明かすことができ、チームメンバーは久々のシャワーと人里でリフレッシュしました。朝、気持ちを新たにレースを再開したチームは、昼頃には次のコントロールストップ地点グレンダンボに到着。ここまでは順調でしたが、午後から一転、厳しい環境に直面します。空は厚い雲に覆われ、日差しが遮られたことで発電量が大幅に低下。さらに南下するにつれて強い横風が吹き荒れ、巨大なロードトレイン(※4)が隣を通過するたびに、マシンは大きく揺さぶられました。ドライバーを務めたメンバーらは、想像以上の体力と精神力を削られる一日となりました。アデレード近郊では翌日以降さらに悪天候が予想され、次のコントロールストップ地点ポートオーガスタは大雨との情報も入っていました。そのため、この日は無理をせず、比較的天候の穏やかな地点で早めに走行を切り上げ、太陽が出ているエリアで充電に十分な時間を費やすという戦略を選択。結果として4日目の走行距離は503kmと前日より少なくなったものの、これはあくまで先を見据えた冷静な判断でした。
いよいよ翌日、アデレードのゴールが目前に迫ります。学生の中には「もう泣きそう」という声も聞かれるほど、緊張と期待が高まっていました。それでも彼らは夜遅くまで翌日の準備に余念がなく、最後の瞬間まで気を抜かずにできる限りの準備を行い、翌日の走行に備えます。

※4 オーストラリアで用いられている、長大なトラック。コンテナを積載したトレーラーを大型トラックに複数連結し、ハイウェイを利用して大量の貨物を輸送する。全長100 mを超えるような車両が時速100 kmという高速で走行するため、非常に強力な風による巻き込みが発生。競技ルートは片側1車線の対向車線であるため、すれ違う際はソーラーカーが吹き飛ばされるほどの風圧が発生することも。

暫定順位:15 走行距離:503km 総走行距離:2681.2km 走行時間:8:00~17:00 巡航速度:70km/h
コントロールストップ:グレンダンボ 宿泊地:ポートオーガスタ36km手前
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  • レースロードとなるスチュアートハイウェイ
  • 地平線まで道が続く

[8月29日・レース6日目]— 暴風を越えて、涙のゴールへ

レース最終日、入念にメンテナンスをおこなう
ついにゴールを目前にした最終走行日。早朝、チームは暴風雨の気配漂う地域の手前からスタートしました。幸いにして太陽光による発電は可能な日照量で、可能な限り充電を確保してからの出発となりました。しかし、南下するにつれて状況は一変。アデレードに近づくほどに目まぐるしく天気が移り変わり、雨と風は猛烈に吹き荒れ、マシンは横風に煽られて脱線寸前に追い込まれる場面もありました。
  • ソーラーカーに向かうドライバー
最後のコントロールストップ・ポートオーガスタでは嵐のような豪雨で大粒の水滴を纏うマシン
そんな極限の環境の中でも、メンバーらは冷静さを失いませんでした。バッテリー残量には余裕があり、速度を上げることも可能でしたが、チームは「安全第一」「完走優先」を選択。周囲のチームが次々とリタイアしていく状況を踏まえ、順位を競うよりも最後まで走り抜くことを最優先にしました。
それでも、容赦なく吹き付ける横風はドライバーの体力を確実に奪っていきました。ゴールまで残り100kmを切った時、ここまでチームを引っ張ってきた頼れるドライバー・宮さんが無線でこう訴えます。「もう手の感覚がない—」。その言葉に、暴風下での運転がどれほど過酷なものかをチームは改めて思い知らされました。ソーラーカーは全てが学生の手作り。3,000kmを走破するため、重量削減は重要なファクターであり、当然、乗用車のようなパワーステアリングはありません。車重155kgと車体に掛かる風圧をドライバーはすべてその両手で受け止めなければなりません。
ここでハンドルを託されたのは、経験豊富な保積さん。彼は以前、野営中にこう語っていました。「最後は宮さんにゴールしてほしい。予選で機体が損傷した時に涙した先輩を見て、絶対に自分の運転でマシンを壊すわけにはいかない」。その言葉通り、保積さんは先輩への想いと責任感を胸に、暴風に果敢に挑みます。


「まだか、まだか」—サポートカーからの無線やYouTubeのライブ配信で、仲間たちや応援者の声が重なり合う中、ついにアデレードの街が視界に入りました。市街地では信号や交通の制約もあり、最後まで気の抜けない走行が続きましたが、ついに本学のソーラーカーはフィニッシュストップに到達。大阪工業大学ソーラーカープロジェクトは、今大会最後の完走チームとして、歴史にその名を刻みました。完走したチームだけが走行を許されるビクトリーロード(アデレード・ビクトリースクエア)では、沿道から大きな拍手が送られる中、偉業をたたえるシャンパンファイトを行い、完走チームの慣例である噴水(Three Rivers Fountain Adelaide)に飛び込みました。初出場にして完走という偉業を果たしたメンバーらは涙を流しながら抱き合い、共に駆け抜けた長い旅路の終わりを噛みしめました。



この挑戦の結末は、単なる「ゴール」ではなく、学生たちの努力と絆、そして応援してくださった全ての方々の想いが形となった「勝利」そのものでした。
  • アデレードのビクトリースクエアで祝福を受けるメンバーらとマシン
最終順位:14 走行距離:345.7km 総走行距離:3026.9km[完走] 走行時間:8:00~16:41 巡航速度:61.4km/h
コントロールストップ:ポートオーガスタ 


ライブ配信のアーカイブはこちらから

限界を超える学生の成長

BWSCは単なるレースではなく、「技術」「判断力」「協働力」が問われるサバイバルチャレンジであり、持続可能な個人移動手段を実現するという世界最高峰のイノベーション課題へのチャレンジでもあります。車両の設計・開発・製作やチーム運営だけでなく、現場で絶え間なく発生する困難を前に冷静に判断し対処する力、仲間と支え合い乗り越える力が試される場でもあり、メンバーらはそれらを大きく伸ばしました。

この成果は学生の努力に加え、指導教員、大学関係者、協賛企業、そして応援してくださった皆さまのご支援のおかげです。心より感謝申し上げます。

  • 大会恒例となっている” Three Rivers Fountain Adelaide”に飛び込むメンバーら