1.発表者:
野々口 斐之(京都工芸繊維大学 材料化学系 准教授)
湯村 尚史(京都工芸繊維大学 材料化学系 教授)
細川 三郎(京都工芸繊維大学 材料化学系 教授)
村田 理尚(大阪工業大学 工学部応用化学科 准教授)
2.発表のポイント:
3.発表概要:
京都工芸繊維大学 材料化学系 野々口斐之准教授、湯村尚史教授、細川三郎教授、大阪工業大学 工学部応用化学科 村田理尚准教授らは、産業技術総合研究所センシング技術研究部門 製造センシング研究グループ 鈴木大地主任研究員らと協力して、安定な n 型熱電材料として注目されてきたニッケル-エテンテトラチオレート系配位高分子(poly(NiETT))に対し、これまで大きな障害となっていた「不溶性」の問題を解決しました。研究チームは、水と有機溶媒を適切に混ぜることで、poly(NiETT) 粉末が自然にほぐれて分散する新しい手法を発見しました。このシンプルな方法により、従来は困難だった薄くて柔軟なフィルムの作製が可能となりました。
得られたフィルムは、電気伝導度やゼーベック係数といった温度差発電(熱電)特性において高い性能を示し、さらに湿気のある空気中でフィルムを加熱すると水分が「ドーピング効果」をもたらし、性能が向上することも明らかになりました。環境要因を逆手に取った制御法は、有機熱電材料の新しい活用の道を開きます。加えて、この材料をカーボンナノチューブと組み合わせた試作センサーでは、テラヘルツ波(THz波)と呼ばれる電磁波(赤外線)に対して、従来の約4倍の感度を実現しました。テラヘルツ波は次世代通信(6G/7G)や医療診断、非破壊検査に応用が期待されており、本成果はエネルギー変換材料としてだけでなく、高感度光センサーとしての実用化可能性も示しています。
この研究は、扱いづらいとされてきた有機 n 型熱電材料に新しい加工ルートを与えるとともに、柔軟で環境に適応するエネルギーデバイスや次世代光センサーの開発に向けた重要な一歩となります。本研究に関する研究論文は英国王立化学会の学術誌「Journal of Materials Chemistry A」のオンライン版に掲載されました。(DOI : 10.1039/D5TA03728J)
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図1.poly(NiETT)の化学構造
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図2.poly(NiETT)粉末が水を25%含むテトラヒドロフラン溶液に自発的に分散する様子
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図3.poly(NiETT)の薄膜調製技術
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