透明なプラスチックでX線を遮る
病院や健康診断でレントゲン撮影を受けたことはありますか?レントゲン撮影では、私たちの体を透過するX線という目に見えない光の一種を利用しています。一方、X線を扱う医療現場では、医療従事者を不要な被ばくから守るため、X線を遮る材料も欠かせません。X線を遮る材料としてよく知られているのが鉛です。しかし、鉛は重く、人体や環境への有害性も問題となります。
そこで私たちの研究室では、「透明でありながらX線を遮るプラスチック」の開発に取り組んでいます。
カギとなるのは「ビスマス」という元素
私たちが着目したのは、原子番号83の「ビスマス」という金属元素です。ビスマスは鉛と同じく原子番号が大きく、X線を吸収しやすい性質を持っています。さらに、鉛と比べて毒性が低いことから、鉛に代わる材料として期待されています。
分子設計の工夫でビスマスとプラスチックの複合に成功!
プラスチックは、小さな分子が多数つながってできた「高分子」と呼ばれる材料です。どのような原子を、どの位置で結びつけるかによって、その性質は大きく変化します。私たちは、ビスマスと比較的安定に結合を形成できる有機構造の選定を行うことで、ビスマスを含んだ無色透明なフィルムを得ることに成功しました。このフィルムは、厚さ約0.5 mmのフィルムによって、使用したX線の99.99%以上を遮ることができました。
X線遮蔽だけではない、もう一つの機能
このプラスチックには、もう一つ興味深い特徴があります。それは「屈折率」が高いことです。屈折率の高い材料を使うと、レンズを薄く、小さくできるため、スマートフォンのカメラや光学機器への応用が期待されています。今回開発した無色透明なプラスチックは、屈折率1.72という高い値を示しました。これは一般的なプラスチックの屈折率を大きく上回ります。
分子の設計から未来の材料をつくる
私たちの研究の面白さは、原子や分子という目に見えない世界での工夫が、実際に手に取ることのできる材料の性質を大きく変えることです。私たちはこれからも、元素が持つ特徴を最大限に活かし、従来の常識にとらわれない新しいプラスチックの開発に挑戦していきます。



