見えないところで育つもの
秋は収穫の季節です。実った稲や色づいた果実を見ると、「成長は目に見えるもの」だと思いがちです。でも、その実りの前には、土の中で根を張るための長い時間や、花が咲いて実がなり、その実がゆっくり熟していくための静かな準備期間があります。実りの季節のずっと前から、成長は見えないところで進んでいるのです。
学生相談室では、「周りから『とにかく動いてみたら』『早く決めたら』と言われるけれど、どうしても動けない」と話す学生がいます。動けないのは、怠けているからではなく、心の中でまだ準備できていないことがあるからです。そんな時は無理に動こうとせず、自分の好きなことや気になること、大切にしたいことを少しずつ言葉にしていく時間を持つことで、「自分は本当はこう進みたかったんだ」と、自分の進む方向が見えてくることがあります。
私たちはつい、目に見える成果で自分を評価してしまいがちです。でも、人の成長には、外からは見えない準備期間があります。考え続けること、迷うこと、立ち止まることも、根を育て、実が熟するための大切な時間なのかもしれません。
もし今、「何も進んでいない」と感じていたとしても、焦らなくて大丈夫です。自分の中で育っているものを信じて、少しだけ待ってみる。秋の実りが長い準備の先にあるように、あなたの中にも、まだ見えていない実りが静かに育っているかもしれません。
学生相談室カウンセラー 大谷 真弓



