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教職ゼミ「数学特論」

一般教育科 
准教授 服部 哲也

服部 哲也
2009.12.16
  • 授業風景1

    授業風景1

  • 授業風景2

    授業風景2

 一般教育科数学教室では、微積分や確率統計など一般学生向けの科目のほかに教員になるための教職科目も担当しています。ここでは私が担当している「数学特論」という数学書を深く読んでいくゼミの話をしましょう。この授業では、学生が指定された数学書を読み、黒板を使って説明していきます。準備が不十分なら何もできなくなりますし、理解が不十分なら質問に答えられなくなります。本を読んで、理解し、説明の仕方を考え、質問に対応することを要求しています。説明や議論のギャップを埋める考察が必要となりますが、全員が理解できず、その場で全員で考えることもしばしばあります。各学生が自分の意見を述べ、ディスカッションが始まり、ときには良い方向に進み、ときには間違った方向に進み、全体を見ながらヒントを出したり、反例を出したりして軌道を変えます。その間の各学生の言動は逐一観察しています。ずっと滞っていると重たい空気になるので、その箇所は宿題にし、数学的なクイズを出題することもあります。

 こうした授業なので、毎年雰囲気は変わりますし、半期28コマあって20ページ程度しか進みません。数学書をきちんと読むというのはそれぐらい時間がかかるということです。「自分ならもっとできる」と思う学生は受講してみれば分かります。ただし、事前に「現代解析学」「現代幾何学」「現代代数学」という科目のいずれかの単位取得を義務としているので、その壁を越えてくる必要があります。

 この科目を担当して6年目ですが、前年度不合格の学生が再度受講し、成長する場面にも遭遇します。以前できなかったことでも1つ2つ先を見据えた準備や議論ができるようになる学生です。こうした学生たちには喜びを覚えます。また、良い意味で想定外の学生に1人だけ出会いました。その学生は短期間で独学で「ε−N論法」を理解し、定理の証明をしました。質問にも適切に答え、考察にも努力が垣間見えました。「ε−N論法」とは数列の極限を厳密に扱う論法です。「限りなく近づく」という定義では曖昧で扱えない場合に「ε−N論法」が必要になります。話を戻しますが、彼には数学についての才能が埋もれていた感がありましたが、私にとっては嬉しい発見でした。私が出会った教職志望学生の中で最も優秀だと思います。今、彼は中学校の教師をしています。