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水中での精密有機合成を目指した新規触媒反応系の開発

応用化学科 
准教授 大高 敦

大高 敦
2014.11.27
  • 図1. ポリイオンコンプレックスの概略図

    図1. ポリイオンコンプレックスの概略図

  • 図2. ポリイオンコンプレックス担持金属ナノ粒子

    図2. ポリイオンコンプレックス担持金属ナノ粒子

  • 図3.ポリスチレンに安定化した金属ナノ粒子

    図3.ポリスチレンに安定化した金属ナノ粒子

 快適な生活を実現するために、様々な種類の新しい製品が次々と開発され、日々作られています。また身の回りに存在する製品のほとんどは化学製品(有機化合物)であるので、その合成には必ず「有機合成反応」が利用されています。そのため「新しい製品(化合物)を合成する」ことと同様に「新しい反応」を開発することは非常に重要となります。
 これまでに数多くの新しい反応(例えば2010年ノーベル化学賞に選ばれた鈴木カップリング反応など)が開発されていますが、そのほとんどは有機溶媒(油)中で行われる反応です。つまりそれらの反応には常に火災や爆発の危険性が含まれています。一方、私たちは生命活動を維持するため種々の反応を細胞内(水中)で行っています。また酵素(金属種を含む高分子化合物=“触媒”)が水中で適切な反応場を構築することが、反応の進行に非常に重要な要因となっています。つまり水中においても適切な反応場を用意すれば、有機反応の進行が可能であると考えることができます。

 触媒有機化学研究室では、「生体内(水中)で行われている様々な反応を簡単にフラスコ内で再現する」ということを目標に、“油”である有機物を“水中”で目的とする反応に利用するための手法の開発をしています。また「金属ナノ粒子」というナノサイズ(10-9m)の小さな粒の金属を触媒として用いた水中での新しい反応の開発も目指しています。これまでに、プラスの電荷を有する高分子とマイナスの電荷を有する高分子を用いて、溶液の酸性度の違いによって分散・凝集が制御できる触媒(図1,2)や最も単純なポリスチレンという高分子化合物に安定化させた金属ナノ粒子触媒(図3)を開発し、これらを用いると鈴木カップリング反応をはじめとする様々な反応が水中で効率よく進行することを確認しています。