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安定元素の中で最も重いビスマス

応用化学科 
講師 松村 吉将

松村 吉将
2023.06.27
  • 図1.ビスマスとは

    図1.ビスマスとは

  • 図2.透明で高屈折率なビスマスポリマー

    図2.透明で高屈折率なビスマスポリマー

 受験生の皆さん、こんにちは!応用化学科 講師の松村です。

 皆さんは、ビスマスという元素を知っていますか?周期表では83番目(第15族、第6周期)に位置する元素で、元素記号はBiです(図1)。ビスマスの右隣はポロニウムという放射性元素で、左隣は毒性が高いとされている鉛です。ビスマスは厳密には放射性元素に分類されていますが、その半減期がおよそ190京年と宇宙の年齢よりも遥かに長いため、事実上の安定元素として使うことができます。さらに、鉛などとは異なり、人体に対する毒性も極めて低いとされており、整腸剤の有効成分として使われています。他にも、化粧品や鉛フリーはんだなどへの応用もされています。

 鉛は高い屈折率や放射線吸収生などの重金属に由来する興味深い特徴がありますが、先に述べた毒性の理由から使い道が制限されています。一方でビスマスは、鉛とよく似た特徴を持っていながらも、毒性が低く安いため鉛の代わりに使うことができます。

 私の研究室では、そのような面白い元素であるビスマスを活用した機能性材料の開発に挑戦しています。具体的には、ビスマスを有機ポリマーと分子レベルで適切に複合する方法を探りながら、新規な材料を開発しています。例えば、ビスマスを高い割合でポリマーに複合することで、透明で屈折率の高い材料が得られています(図2)。屈折率の高いポリマーを使って作られたレンズは、プラスチックレンズと呼ばれ、メガネレンズ、スマートフォンカメラ、モニターの反射防止フィルム、ヘッドマウントディスプレイなどに欠かせない材料として使用されています。

 ビスマスは、有機物とは相性がよくない元素なので、材料へ応用することは非常に難しいのですが、それを可能にするために日々研究を行なっています。


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