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鉄道模型とネットワーク技術

ネットワークデザイン学科 
准教授 島野 顕継

島野 顕継
2014.11.06
  • マイクロコンピュータ搭載機関車

    マイクロコンピュータ搭載機関車

  • ネットワークで制御する鉄道模型の構成例

    ネットワークで制御する鉄道模型の構成例

皆さんは鉄道模型をご存じでしょうか.日本では「Nゲージ」と呼ばれる大きさのものが普及しています.鉄道模型の機関車には(たとえ蒸気機関車やディーゼル機関車でも)モーターが搭載されており,電気エネルギーで回転したモーターの力を車輪に伝達して走行します.

昔の鉄道模型では,車輪の載っている2本のレールのうち,一方を+極,他方を-極にして電気を流し,電圧の大小によってモーターの回転数が変わり,機関車の速度が変わるという制御方法でした.また,+極と-極を逆にすると,機関車の進行方向が変わります.この仕組みの鉄道模型は現在でも存在していますが,電圧の大きさと電流の方向で制御しているため,複数台の機関車を同時にレールに載せると,すべてが(ほぼ)同一速度で走るという特徴があります.

コンピュータ技術が発達した最近の鉄道模型では,番号の割り振られたマイクロコンピュータが各機関車に搭載されており,コントローラ(制御装置)から「5番の機関車のみ発車しなさい」「8番の機関車のみ汽笛を鳴らしなさい」という命令を出すと,それらがレールというネットワークケーブルを介して機関車に届きます.また,ポイントや信号機も同じ方法で制御することができます.この制御方法では,レールの電圧は一定です.

ところで皆さんはハッカーという言葉を聞いたことがあるでしょう.マスコミは「高度な技術で不正アクセスする人」という意味で使っていますが,元々hackという動詞は「おの等でたたき切って物を作る」という意味で,転じて「コンピュータや電気回路について深い技術を持ち,その知識を利用して技術的課題を解決する人」というのが本来のハッカーです.

理工系分野で初めてhackという言葉が使われたのは1950年代でした.アメリカマサチューセッツ工科大学鉄道模型部が中古電話機の部品を使って,鉄道模型の制御システムを作成したのです.このような,機器の創造的な活用方法をhackingと呼びました.

このように,鉄道模型はコンピュータやネットワーク技術と深い関係があるのです.