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「都市デザイン工学フォーラム2016」を開催しました
2015.12.09
工学部都市デザイン工学科と同学科の同窓会組織「大阪工業大学土木会」が12月5日、「都市デザイン工学フォーラム2015」を開催し、建設関係者や地元市民、在学生ら約200人が参加しました。
今回は「地域の防災、環境再生―大阪市旭区を対象として―」をテーマに、都市デザイン工学の観点から学内外3人の有識者による講演が行われただけに、関心を持つ地元の市民の姿も目立ちました。
それぞれの講演の要旨は次の通りです。
●「地域防災力の再構築」
=西村知己氏(大阪市旭区役所総務課防災担当係長)
近い将来に懸念される南海トラフ地震(海溝型)で旭区内はほぼ震度6弱の揺れで、死者数は21人、建物被害は全建物25035棟の内8089棟と想定されています。上町断層帯などによる直下型なら震度は6強~7。死者は最悪(早朝)で623名。建物被害は16400棟との想定です。
区の防災マップに記載していますが、区内には飲料水の耐震性貯水槽や備蓄物資保管庫が各1カ所あり、マンホールトイレも各地域に準備されています。地区防災計画の作成、自主防災組織づくりなど旭区の防災の取り組みは他区と比べて進んでいます。休日の職員の宿直・日直も他区に先駆けて9月から始めました。また昨年、大阪市では初めて民間施設である常翔学園での合同避難所開設・運営訓練も実施。他大学からの見学があるなど注目を集めました。今年はより連携を強めた訓練になりました。9月の区総合訓練も医師会との協力を含めたハイレベルな訓練になりました。今後も旭区から積極的に防災を発信していきます。
●「よみがえれ、イタセンパラ~近年の淀川生態環境の劣化と再生~」
=綾史郎教授(本学都市デザイン工学科・淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク会長)
淀川水系は天然記念物のイタセンパラをはじめ多くの貴重魚種が生息しています。一つの水系としてはまれなことです。なかでもワンドという大小の池状の人工的水域にその魚種の8割以上が生息したり利用しています。
1970年代からの河川改修などでワンドが激減し環境劣化が進みました。同時にブラックバスやブルーギルなどの肉食性外来魚が爆発的に増殖しましたことで、さらに在来種の絶滅が危惧されたのです。これに対して2000年代に入り、環境の復元や、外来種対策が徐々に進みました。市民ネットワークでは外来魚の定期的な駆除やイタセンパラの放流などの活動をしていますが、「イタセンパラを一部のワンドだけでなく淀川全域に再び泳がせよう」と言うのが大きな目標です。
●「高齢社会のまちづくりと都市再生」
=岩崎義一教授(本学都市デザイン工学科)
あと10年で日本は75歳以上の後期高齢者が5人に1人、65歳以上が3人に1人となります。国の社会保障予算も限界が来ます。それに備えた社会の仕組み作りは進んでいません。全てを国任せにできないなか、高齢者が支えられる側から支える側になり、高齢者を活かすコミュニティーづくりが求められます。共助、共感、共有により安心でやりがいや生きがいのある社会が生まれます。これからは都市計画より都市運営を考えないといけないのです。
旭区の高齢者のアンケート調査を実施した結果、自分たちの技術や知識を生かすコミュニティービジネスへの意識が低くないことが分かりました。特にマンション居住者はコミュニティービジネスを通して社会とのつながりを求めています。また区内の高齢者は、全国のデータと比較して必ずしも老いを否定的に捉えていないことも分かりました。