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大阪工業大学から世界へ

総合人間学系教室 
教授 川田 進

川田 進
2022.12.20
  • タイからミャンマーへの入国ゲート

    タイからミャンマーへの入国ゲート

  • ホーチミンの戦争証跡博物館

    ホーチミンの戦争証跡博物館

 工学部総合人間学系教室は人文学、社会科学、外国語、健康体育などの授業を担当しています。私の専門分野は、アジア地域研究と宗教社会学です。三十数年前からアジア各国で民族紛争や宗教問題に関する現地調査を続けてきました。その研究成果を活かして、「世界と人間」(1年生)、「国際関係論」(2年生)、「中国語」(3年生)の授業を提供しています。写真1はタイからミャンマーへの入国ゲートです(2017年撮影)。島国で育った私が歩いて国境を越える時、何ものにも代えがたい感動と興奮を味わいました。

 外国訪問の中で印象に残った国の一つがベトナムです。経済成長が著しいベトナムには、20世紀の戦争の傷跡が今も各地に残っています。写真2(2019年撮影)はホーチミンという都市にある戦争証跡博物館です。ここには1960年代、70年代にベトナム戦争に介入したアメリカ軍の戦車や戦闘機が多数展示されており、60年が経過した今も圧倒的な重量感と威圧感を誇示していました。この戦争でアメリカ軍は、ジャングルの密林に逃げ込んだベトナム兵を追い出し、農業に打撃を与える目的で、ダイオキシンを含む枯れ葉剤を大量に散布したため、その後ベトナムでは多くの肢体不自由児が生まれるという悲劇が発生し、今もベトナム社会はその後遺症に苦しんでいます。

 2022年度から大学院工学研究科では、「グローバル・リーダーシップ特論」という新科目も担当しています。この授業では、学部で学んだ国際理解や国際関係の視点を踏まえて、「開発途上国への支援活動」「アメリカと中国による新技術の開発競争」「半導体の争奪戦」「脱炭素社会の行方」「デジタル大国化する中国の動向」「AI(人工知能)を利用した軍事作戦」「水と食糧から考える安全保障」等のテーマに取り組んでいます。そして、工学を学ぶ大学院生の理解する力、考える力、表現する力を向上させることを目指しています。

 私たちが暮らす世界は、答えのない問いに満ちています。大阪工業大学の学生は、「問い」と「答え」を巡る時間に身を置いて、じっくりと思考力を鍛えます。